研究課題/領域番号 |
24221005
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
瀬戸 誠 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (40243109)
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研究分担者 |
壬生 攻 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40222327)
三井 隆也 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (20354988)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | メスバウアー効果 / 同位体特定 / 放射光 / 磁性薄膜 |
研究概要 |
メスバウアー分光法では、ある原子核を取り巻く電子構造および磁性についての情報を、これらが原子核へ与える微細な変化から得ることが出来ることより、元素(同位体)を特定しての測定が可能である。さらに、放射光のエネルギー選択性・高輝度特性と同位体置換法を用いることで、先進的なメスバウアー分光が可能となる。このような測定を実現すると期待されている放射光吸収メスバウアー分光法の開発を行っているが、低温・高温、強磁場、超高圧などといった極端条件下での実用的な測定を行うためには、さらなる測定効率向上が必要である。 この方法では、散乱体試料中の共鳴励起を起こした原子核から脱励起に伴って放出されるγ線や蛍光X線を検出することで測定を行っているが、これに加えて放出されている電子は検出されていなかった。これは、これまでの検出器にはノイズの原因となる可視光を遮るためにX線窓として金属Be板が取り付けられていたが、これによって電子が遮られていたためである。そこで、このX線窓を無くした検出器を散乱体と同じ真空チェンバー内に封入することにより、可視光を遮りつつ、電子も検出できるシステムを構築した。このシステムに対して、γ線、蛍光X線、電子の検出効率を調べる事で最適化を実施した結果、Yb-174メスバウアースペクトル測定において、これまでの方法に比べて5倍もの測定効率向上を達成することが出来た。さらに、脱励起後の散乱を検出する時間範囲を選択することで、実効線幅の拡がりを自然幅以下に抑制することに成功し、高分解能測定が可能であることを実証した。 また、高品質単結晶FeBO3核モノクロメータを用いた超単色X線ビーム特性を制御可能な専用システムの開発を行うことで偏光状態制御を可能とし、さらにダイアモンド結晶を用いた移相子を組み合わせることで、これまでの直線偏光に加えて円偏光生成を実現することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画では、X線窓を無くした放射光吸収メスバウアー分光システムの開発が大きな目標であったが、これを実施しYbのメスバウアースペクトル測定が可能であることを示した。さらに、これまでと比べて5倍の測定効率向上を達成することが出来た。また、通常のメスバウアー分光法と比べて、高分解能測定が可能であることも実証することが出来た。また、斜入射メスバウアー分光装置およびメスバウアーイメージング分光装置のための高輝度超単色X線のビーム特性を精密制御可能な専用システムの開発研究も行い、偏光状態制御の実現と移相子と組み合わせることよる円偏光生成も行う事が出来た。よって、研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度には放射光吸収メスバウアースペクトル測定を実現する分光器の開発を行い、検出効率向上を実現することが出来たが、多元素での高効率測定を実現するための開発研究を継続して実施する。また、この分光システムを核共鳴非弾性散乱測定に用いた場合、大変有効なものとなることが期待できるため、その可能性についての探求も実施する。 また、高輝度超単色X線のビーム特性を精密制御可能な専用システムの開発研究も継続して実施するが、さらに、試料から散乱されてくるX線と電子線をそれぞれ検出可能な2重ガスフロー型の比例計数管検出器を開発することで、深さ弁別内部転換電子(X線)分光器の開発を行う。これとμm空間分解能を実現する集光系とを組み合わせることで3次元電子状態測定を可能とするメスバウアーイメージング分光装置の開発研究を実施する。 また、これらの装置を用いた磁性薄膜表面部のスピン構造解析やレーザーピーニングによる局所改質効果などの研究も実施する。
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