研究課題
本研究では、多元素でのメスバウアー効果測定を実現し、放射光の高い輝度を活かした先進的な分光法の開発・確立と、同位体置換法を用いることで、これまでには困難であった特定部分だけの微視的測定を可能とするなどといった応用研究領域の拡大を指向した先導的な物質科学研究を実施することを目的とした。本年度は、先進的分光法として開発を行ってきた電子線検出方式を用いた放射光メスバウアー吸収分光法の高度化研究を実施し、迅速かつ容易な解析手法も含めた先進的かつ実用的な分光法として確立することができた。そして、これによりNiナノ粒子の磁性などの基礎物性、リチウムイオン二次電池の充放電機構、生体関連酵素分子におけるNiの電子状態に関する研究などを実施した。さらに、放射光メスバウアーγ線の線質制御技術(偏光、平面波)についての開発研究を行い、斜入射法によるスピン配向に敏感な表面・界面部の局所分析や超高圧メスバウアー分光等の特殊環境下放射光メスバウアー分析法を飛躍的に高度化させた。また、従来の放射性同位体線源では全く不可能な極小角散乱メスバウアー分光法を実現した。さらに3次元電子状態測定を可能とする深さ分解メスバウアー分光装置を実現するため、2重ガスフロー型比例計数管検出器の開発を行った。同位体制御技術を用いた研究として、スピントロニクス材料として期待されるFe2O3超薄膜におけるスピンフロップ転移(Morin 転移)の観測を行い、Morin 転移温度が微量のイリジウム添加により大きく上昇する現象の機構解明に関する研究を実施した。また、核共鳴散乱体をアナライザーとして用いた準弾性・非弾性散乱法の高度化研究も実施し、既存の方法を超える時間-空間領域での測定を実現し、基礎・応用両面での研究を可能とする強力な分光法を開発した。これを用いて、イオン伝導体、液晶、ガラス転移物質などについての先導的な研究を実施した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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