研究課題
基盤研究(S)
本研究では,KEK物質構造科学研究所の低速陽電子実験施設の低速陽電子ビームを利用して、反射高速電子回折(RHEED)および低速電子回折(LEED)の電子を陽電子に置き換えた、反射高速陽電子回折(RHEPD)および低速陽電子回折(LEPD)の、実用的な輝度と強度をもつ装置を開発している。本年度は、まず、コリメータを使った反射高速陽電子回折(RHEPD)ステーション完成させた。コンバータ/モデレータで10keVの陽電子ビームを作り、磁場でガイドして実験ホールに導いた。ガイド磁場から解放された陽電子ビームをコリメータで絞ってビーム質をよくし、RHEPDチェンバーに導入した。再放出輝度増強は次年度に行うこととして、実際の回折パターン観測を行った。最初の測定として、Ge(001)面上にPtを蒸着したときに生じる表面1次元構造の研究を行った。この構造については、従来、提唱されていたモデルのうちどれが正しいかわかっていなかったが、本研究によってそのうちの一つが正しいことが確定した。また、温度100K以下で相転移を起こすことが知られていたが、高温側では最表面からとび出しているGe原子対が同じ高さであり、低温側では交互に異なる高さで並んでいることを明らかにした。低速陽電子回折(LEPD)ステーションには、センターホール付マイクロチャネルプレート(MCP)および阻止電場用グリッドを備えたLEED用の装置を改造して用いる予定であったが、光学系の特注仕様の検討中に、検出器をディレーライン検出器に変更すればより高感度の測定が可能であることが判明した。そのためにはビームライン輸送および輝度増強システムの試験と特注仕様詳細の変更が必要になり、それに必要な経費を次年度に繰り越した。2013年度に設計を行って発注し、納品された。ステーションの構築は2014年度に行う。
2: おおむね順調に進展している
コリメータ方式の反射高速陽電子回折(RHEPD)ステーションを完成させ、応用研究を開始した。Ge(001)面上にPtを蒸着したときに生じる表面1次元構造の研究を行い、相転移温度の両側で異なる表面の原子は位置を確定させた。低速陽電子回折(LEPD)ステーションについては、検出器をディレーライン検出器に変更すれば当初計画よりも高感度の測定が可能になることが判明した。そのためにはビームライン輸送および輝度増強システムの試験と特注仕様詳細の変更が必要になり、それに必要な経費を次年度に繰り越した。2013年度に設計を行って発注し、納品された。
反射高速陽電子回折(RHEPD)については、コリメータ方式から透過型再減速材を用いた輝度増強方式に変更する。その後、まず、完成した装置の表面構造に対する感度の高さを実証する測定を行う。さらに、新しい表面構造の原子配置の決定や、他の手段で長年かかっても構造が決まっていない物質表面の構造の確定を試みる。低速陽電子回折(LEPD)については、光学系の設計と、DLD検出器を高強度で有効に使うための陽電子ビーム・パルスストレッチ部の設計、作製を行う。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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http://pfwww.kek.jp/slowpos/