研究課題/領域番号 |
24221007
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
兵頭 俊夫 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特定教授 (90012484)
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研究分担者 |
高橋 敏男 東京学芸大学, 教育学部, 研究員 (20107395)
深谷 有喜 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (40370465)
藤浪 眞紀 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50311436)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | 陽電子回折 / TRHEPD / LEPD / 表面構造 / シリセン / グラフェン / ナノワイヤ構造 / 二酸化チタン |
研究実績の概要 |
全反射高速陽電子回折(TRHEPD)では、TiO2(110)-(1×2)表面の構造解析を完了し,論文を出版した。この構造は発見から30年間、多くの構造モデルが提案されていたにもかかわらず結論が出ていなかった。その中ではTi2O3モデルが最も正しいのではないかと思われていたが、表面にあるTi2O3構造の2個の四面体構造の中心のTi原子を同じ高さに保つと、TRHEPDデータとの一致のよい配置は、エネルギー的に不安定であることが分かった。そこで、対称的な構造にこだわらずに、高さが違ってもよいという条件で最適構造を探索したところ、実験値とよりよく一致する原子配置が得られた。理論的にも、最近、表面の化学組成と原子位置を同時に変化させた探索により、同様の構造が報告されている。よって、この構造が理論的にも実験的にも正しい構造であるという結論に達し、30年間の論争に決着をつけた。 Cu(111)表面とCo(0001)表面状に成長させたグラフェンの高さが、理論の予想通り、互いに異なること、またバックリング(凸凹構造)はないことを見いだした前年度の成果を論文にまとめて出版した。 さらに、新たに、Al(111)基板上のゲルマネン(Geの単原子層)の構造解析を行い、論文投稿準備中である。 低速陽電子回折(LEPD)装置開発では、昨年度完成したLEPDビーム系を用いたビーム試験を行い、必要な強度が出ていることを確認した。また、遅延アノード位置敏感検出器(DLD)を用いるLEEDシステムの調整が終わった。Si(111)(7x7) 表面のLEEDパターンを測定して正しく機能していることを確認し、LEPDビームラインに組み込んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
全反射高速陽電子回折(TRHEPD)装置は完成し、半導体表面状の原子ナノワイヤやTiO2(110)(2x1)表面の構造など、長年未解決であった構造を決める他、金属基板上のシリセンやグラフェン等の新奇な単原子層の構造解析を、製造法が発見された後直ちに行っている。 低速陽電子回折(LEPD)装置の建設は、陽電子ビーム・パルスストレッチ部が完成し、、LEPD光学系、検出器系の組み上げも完了して、高輝度・高強度陽電子ビーム利用したものとしては世界初のLEPD回折パターン測定が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
全反射高速陽電子回折(TRHEPD)では、Al(111)基板上のゲルマネン(Geの単原子層)の構造解析の結果を論文にまとめる。また、重元素吸着した金属正面について、吸着原子位置と表面電子状態のスピン分裂幅の関係を明らかにするための原子配置決定を継続する。また、陽電子の全反射条件下のTRHEPDパターンの方位角依存性から、表面原子の面内配置を決定する手法を確立する。 低速陽電子回折(LEPD)では完成した位置敏感DLD検出器を用いた装置を用いて、先ず、Si(111)(7×7)構造のパターンを観測する。その解析のためのLEPDパターン解析ソフトを開発する。つぎに、理論家から提案されている表面付着原子層の陽電子ホログラフィーによる原子位置決定を試みる。さらに、I-V曲線を測定するシステムを確立し、LEEDでは解析が困難な重金属を含む表面の構造解析に挑戦する。 最終年度に当たり、これまでの成果を報告書としてまとめる。
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備考 |
Chem. World/ News(24/3/2016)/Positron thinking solves titania structure after 30 years http://www.rsc.org/chemistryworld/2016/03/surface-bulk-analysis-positron-spectroscopy-titanium-dioxide-structure
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