研究課題
結晶最表面の原子配置に非常に敏感な全反射陽電子回折(TRHEPD)をもちいて、次世代高速・省エネデバイス材料の候補として盛んに研究されている「第IV族原子層物質(グラフェン、シリセン、ゲルマネンなどを金属基板上に合成させた新物質)」の原子配置を決定してきた。2016年度は、ごく最近合成可能になったAl(111)基板上のゲルマネンについて構造解析した。その原子配置は、理論計算から対称的にバックリングしているとされていたが、TRHEPDロッキング曲線測定では、[11-2]方向から見ると対称的だが、[1-10]方位から見ると非対称であることが分かった。この結果から原子配置を詳細に解析した結果、非対称的なバックリングによる原子配置を新しく提案するに至った。原子層物質の電子状態はバックリングに依存するため、その確定は応用上極めて重要である。TRHEPDは入射陽電子のプローブ深さを視射角で調節できるので、視射角を固定して方位角の関数として鏡面反射ピークを解析すれば、上から順々に、深さ選択して原子配置を決めることができる。このTRHEPDの特長を最大限活かした新手法として「方位角プロット法」の開発に着手した。2016年度は、構造が既知のTiO2(110)(1×1)表面で実験を行い、手法の有効性を確認した。低速陽電子回折(LEPD)を加速器(電子Linac)を用いた高輝度・高強度低速陽電子ビームで観測する装置の開発に世界で初めて成功した。ここではパターン測定用の遅延アノード位置敏感検出器の弱点(電子Linacの特性で決まる幅1μsのパルス中に陽電子が高密度で存在すると、マルチヒットで位置情報を正しく判別できない)に対応すべく、パルス幅を適切にストレッチする工夫に特徴がある。2016年度はSi(111)(7×7)表面、およびGe(001)(2×1)表面のLEPDパターン測定に成功した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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