研究課題/領域番号 |
24224003
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小薗 英雄 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00195728)
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研究分担者 |
金田 行雄 愛知工業大学, 工学部, 教授 (10107691)
久保 英夫 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50283346)
中村 誠 山形大学, 理学部, 教授 (70312634)
芳松 克則 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 准教授 (70377802)
隠居 良行 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (80243913)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | Lax-Milgram の定理 / Garding の不等式 / Besov空間 / Triebel-Lizorkin空間 / Navier-Stokes方程式 / Keller-Siegel方程式系 / compensated compactness |
研究実績の概要 |
Banach 空間における一般化されたLax-Milgram の定理と楕円型境界値問題への応用について考察した.Hilbert 空間上の強圧的連続双線形形式に対してよく知られているLax-Milgram の定理をBanach空間に拡張した. X, Y を2つのBanach 空間とする.ただし,Y は回帰的であるとする. a(., .)をX×Y 上の双線形形式とし, a(., .)に付随して決まるX, Y における核空間 N_X, N_Y はともに閉部分空間を補空間としてもつとする.このときもしa(., .)がある一般化された変分不等式に従うならば, N_Y の直交元F, すなわちN_Yに属するすべてのφに対してF(φ) = 0 を満たすY上の線形汎関数 F に対してa(u, v) = F(v) をYに属ずる任意のvについて満たす X の元uが存在する.この定理は流体力学に現れる楕円型偏微分方程式の境界値問題のLr-解の存在定理に応用がある. 次にSobolev空間における非線形偏微分方程式の初期値問題の研究を実施した.Besov空間とTriebel-Lizorkin空間を用いて, 非線形放物型方程式の時間局所解と時間大域解について研究を行った.微分型非線形項を持つ熱方程式の初期値問題を考察し,尺度不変性の議論に基づいて小さい時間大域解,および,長時間解の存在を示した.Navier-Stokes方程式とKeller-Siegel方程式系に応用し,初期値問題の大域適切性を考察した. また関数解析でよく知られているcompensated compactness の補題を境界のある領域上で定義された一般の変数係数一階偏微分作用素とStokesの積分公式によって自然に定まるトレース作用素に拡張することに成功した.さらに,同様な補題が境界のあるコンパクトなRiemann多様体上の微分形式に対しても一般化可能であることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
流体力学の基礎方程式は加速度が速度場に関する時間微分ということから,流れ場に沿う微分というラグランジェの考え方によれば,本質的に非線形偏微分方程式である.数ある非線形偏微分方程式の中で,ナビエ・ストークス方程式の数理解析は,現代解学の中心的なテーマと言える.本研究の数学解析研究班では,偏微分方程式論の基本的な課題である解の存在,一意性,データに対する連続依存性といった適切性から出発し,時間漸近挙動に代表される安定性について世界をリードする成果を挙げていると言えよう. 流体力学研究班については金田を中心に,乱流の計算科学的および統計理論的研究を実施している.とくに最も規範的な乱流場である一様等方性乱流について,世界最大規模のDNS実現の実績とそのデータ解析に基づいた最先端の知見を提供した.
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今後の研究の推進方策 |
非線形解析学と流体力学の2つの研究グループ の有機的連携の基に研究を推進する. (I) 調和解析学、特異極限解析と有限性の影響評価:(i) 無限領域における漸近解析と有限な計算領域の数値解析による領域の有限性の影響評価, (ii) 要素的な渦の特異点挙動の解析と解像度の有限性の影響評価 (II) 乱流のもつ普遍的法則性の解明:(i) 規範的な乱流場の世界最大規模の直接数値計算 (Direct Numerical Simulation, DNS)と非線形偏微分方程式の解の特異点解析による小さなスケールの普遍性の解明, (ii)無限領域における乱流エネルギーの時間減衰の漸近指数を作用素の分数冪と半群理論を用いての解析,およびDNSによる比較検証
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