研究課題/領域番号 |
24224004
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
柴田 良弘 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50114088)
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研究分担者 |
田端 正久 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30093272)
吉村 浩明 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40247234)
舟木 直久 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (60112174)
小澤 徹 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70204196)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | R-有界性 / 安定性解析 / 確率解析 / 有限要素法 |
研究実績の概要 |
・マクロの視点からの流体解析に対し主に以下の成果をあげた。 ― 非線形放物型方程式のLp-Lq最大正則性原理による時間局所解の一意存在および、有界領域での解の減衰定理を組み合わせることによる時間大域解の一意存在とその漸近挙動の解析方法を確立し、ネマチック液晶を記述する方程式と表面張力を考慮した場合の1相非圧縮性粘性流体方程式の自由境界問題の時間局所解の一意存在と有界領域での時間大域解の一意存在と漸近挙動を示した。またネマチック液晶を記述する方程式に対して非有界領域での時間大域解の一意存在を示した。これにより非有界領域での最大正則性原理と解の減衰定理を組み合わせて時間大域解の一意存在を示す初めての試みで今後の研究の基盤となる方法論を確立した。また外部領域での圧縮性粘性流体の方程式の時間大域解の存在とその最良の漸近挙動を示した。これは松村・西田により1970年代に求められた解のクラスを最良にする結果を含んでおり、長年の懸案を解決した。さらに表面張力を考慮しない場合の粘性流体2相問題に対し、その線形化問題のLp-Lq最大正則性原理を示し、特に圧縮・圧縮の場合の時間局所解の一意存在を示した。またこの問題の数値解析として、エネルギィー安定有限要素法を用いて、3気泡上昇問題などの数値シミュレーションを行った。 ・メゾの視点からの流体解析に対し主に以下の成果をあげた。 ― 揺動を伴う界面成長を記述する Kardar-Parisi-Zhang (KPZ) 方程式に対してブラウン運動の分布が不変測度であることを示した。この近似の極限と,通常の近似の極限において,界面の成長速度に1/24 のずれが生ずることも見出した。 ― G不変な非ホロノミック拘束を受ける場合のディラック構造および陰的なラグランジュ系の簡約化手法を提案し,非ニュートン流体であるRivlin-Ericksen流体の定式化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1)Lp-Lq最大正則性原理による時間局所解の一意存在定理の統一的な扱いについては、1相問題に関しては完成した。現在は2相問題についての研究が進展中であり、非圧縮・非圧縮、非圧縮・圧縮、圧縮・圧縮の3通りの場合の線形化問題についてのLp-Lq最大正則性原理はプレプリントではあるが示された。また複数流体の自由境界問題の数値解法のために開発したエネルギー安定有限要素法を用いて,3気泡上昇問題などの数値シミュレーションを行ったことは、混相流の科学計算に数学的に厳密な方法を与えるうえでインパクトの高いものである。 2)圧縮性のnon-slip条件の問題については、原点が連続スペクトルのため従来のL2よる取扱いを行ったが、これにおいても松村・西田の1970年代の研究を解の正則性を最良とし長年の懸案を解決した。またネマチック液晶問題は非ニュートン流の典型的な問題であり、定式化も含めて多くの課題があり、世界的に精力的に研究されている。これに対して幾何的方法論を用い定式化を厳密に行ったことはインパクトの高い研究である。また現在最も受け入れられているEricksen-Leslieモデルに対しても圧縮性の場合の研究は皆無であった。これに対し、Lp-Lq最大正則性原理とLp-Lq減衰評価のよる時間局所解と大域解の一意存在と漸近挙動を示したことは、我々の研究方法でしか達成できないものである。 3)Kardar-Parisi-Zhang (KPZ) 方程式は確率偏微分方程式であるが、発散項を含み、数学的に意味を与えることは難しいがMartin Hairer 氏(2014年Fields賞受賞者)の無限大の繰り込みを行って得られるCole-Hopf 解には意味が付く。これに注目し新たな近似を導入し、ブラウン運動の分布が不変測度であることを示した事は今後の研究に飛躍的な発展をもたらすものである。
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今後の研究の推進方策 |
1)1相問題で確立した方法を拡張することで、有界領域でかつ表面張力がない場合の2相問題研究の完成を目指す。また表面張力がある場合でも非圧縮・非圧縮の場合には1相で確立した方法を拡張する方向で現在研究が進展中である。しかし、非圧縮・圧縮、圧縮・圧縮の場合にはラグランジュ変換が使えないので、これまでに開発した方法は使えない。新しい方法の確立を模索中である。またCREST研究で実験的に発見した気泡雲の運動を外部領域での気液2相問題として定式化する。 まず外部領域における1相問題の時間大域解の存在Lp-Lq最大正則性原理とLp-Lq減衰評価の組み合わせにより示す。また気液2相の場合にこれを拡張する。 2)2相問題は流体数学・流体工学の重要な問題であり多くの重要な課題を含んでいる。これまでの数学的に厳密な研究を踏まえ、工学者と共同で数学的により厳密な数値解析の方法の確立も目指す。特に原子力の過酷事故の数学的解析は固体・液体2相問題であるが、従来のナヴィエ・ストークス・フーリエによる定式化では適切性が示せないように思える。そこでこれまでの研究に加え、ナヴィエ・ストークス・コルトベーグ方程式による定式化とLp-Lq最大正則性原理によるアプローチを現在検討中である。 3)化学反応を含む流体運動は工学において基本的な問題である。ナヴィエ・ストークス・マクセル・ステファンによる定式化を用い、Lp-Lq最大正則性原理とLp-Lq減衰評価の組み合わせによるこれまで確立した方法により時間局所解と大域解の存在を示すことを目指す。また幾何的により厳密な方法による定式化も検討する。 4)マクロの視点からの研究の達成度は高く、初年度では予想もしなかった重要な課題の解決も見えてきた。特にこれらは工学的に重要な問題を多く含むので、工学との共同により達成することを新たなる方向性として含みつつ、研究を完成させる。
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備考 |
※(1)の国際研究集会の正式名称は「International Workshop on Multi-Phase Flow; Analysis, Modelling and Numerics」
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