研究課題/領域番号 |
24224007
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岸本 忠史 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (90134808)
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研究分担者 |
硲 隆太 大阪産業大学, 人間環境学部, 准教授 (00379299)
小澤 正基 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 教授 (80421527)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | 二重ベータ崩壊 / 48Ca / 低バックグラウンド |
研究実績の概要 |
現在の物質優勢の宇宙を説明するにはCP対称性の破れに加えて粒子数の保存則の破れが必要である。現時点で最有力と考えられている説明は、レプトン数保存則の破れが起こるというレプトジェネシスシナリオである。ニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊の研 究は、レプトン数保存則の破れに対応するニュートリノのマヨラナ粒子性を検証するものである。 本研究では、CaF2シンチレータを用いたCANDLES III(UG)システムを使用して48Caの二重ベータ崩壊の観測を行う。さらに測定を高感度化するため、濃縮48Caの製造を行なうとともに、CANDLES IIIシステムを冷却しエネルギー分解能を向上させる。そのために、本年度は、二重ベータ崩壊測定:CANDLES IIIシステムの安定測定を行うとともに、検出器の低バックグラウンド化を進める。また、冷却システム:CANDLES III(UG)システムへ導入した冷却システムの性能評価をする。さらに、濃縮48Ca:48Caの濃縮度ごとの濃縮手法確立、を進める。それぞれについて下記に述べる。 二重ベータ崩壊測定:長期測定においての実験データの安定性の評価を行った。また、高エネルギー領域のバックグラウンド候補である中性子捕獲からのγ線を低減するためのγ線用遮蔽システムの設計および導入を進めた。 冷却システム:CANDLES III(UG)システムに導入した冷却システムの性能評価を行った。一か月の運転において、CANDLES III(UG)システムを4℃に冷却することに成功した。結果、予定通りCaF2の発光量は増加し、エネルギー分解能が30%改善したことを確認した。 濃縮48Ca:低濃度濃縮のための樹脂法濃縮において、効率よい濃縮のための溶媒調査を進めた。また、並行して開発を進めている中濃度濃縮のための電気泳動濃縮法で、原理検証に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
48Ca濃縮は、自然同位体比が0.19%と低い。そのため、高濃度濃縮を実現するためには、濃縮度に応じた濃縮法を開発することが、コスト面からみて効率が良い。そのため、本研究では、まず、低濃度濃縮手法として、クラウンエーテル樹脂を用いた濃縮手法による大量濃縮のための開発を進めてきた。さらに、並行して、中濃度濃縮手法として、電気泳動法を基本とした新しい濃縮法(MCCCE法)の開発を進めている。今年度、この電気泳動法の開発がすすみ、濃縮の原理検証に成功した。現在、濃縮度は48Caと43Caの比で3倍(48Caと40Caの比に換算すると6倍)とかなりよい濃縮倍率を実現している。この手法は、まだ開発が始まったばかりで、大量濃縮を実現するためには、装置改良・泳動条件最適化など開発項目が必要ではある。しかし、開発を進めることで、濃縮法の将来を大きく変える可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の3つの研究項目について、それぞれ下記を予定している。 "二重ベータ崩壊測定"は、γ線遮蔽システムの導入を終了する。 "冷却システム"は、冷却運転でのデータから、バックグラウンド低減能力を評価する。 "48Ca濃縮"は、低濃度濃縮手法での大型濃縮のためのシステム設計を進める。並行して、中濃度濃縮手法における泳動パラメータの最適化を進める。
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