研究課題/領域番号 |
24224008
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
和田 道治 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, チームリーダー (50240560)
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研究分担者 |
森本 幸司 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, チームリーダー (00332247)
加治 大哉 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 仁科センター研究員 (00391912)
小浦 寛之 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎科学研究センター, 研究副主幹 (50391264)
羽場 宏光 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, チームリーダー (60360624)
園田 哲 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 仁科センター研究員 (60525583)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | 質量測定 / MRTOF / 超重元素 / 短寿命核 / ガスセル / 高周波カーペット |
研究実績の概要 |
・多重反射型飛行時間測定式質量測定器(MRTOF-MS)を整備開発し、以前Be同位体のレーザー分光実験に使用していた入射核破砕片分離器(RIPS)のガスセル装置に接続して不安定核8Liを用い最初のオンライン質量測定試験に成功した。 これによって、実際の高エネルギー短寿命原子核の質量を短時間の飛行( 8ms)で高精度(6.6x10-7)の精度で測定できることを実証した。 ・上記測定の解析の過程で、単一参照イオンで質量校正が可能なことを示した。一般に飛行時間測定式質量測定では2種類以上の参照イオンを用いて未知核の質量を飛行時間の内挿(もしくは外挿)によって求める。これは時刻の原点を決定するこることが困難なことによる。一方MRTOF法では、絶対飛行時間に対して原点を決める系統誤差を圧倒的に小さく出来るため、一種類の参照イオンで十分である。1種類参照イオン法は、長時間測定の際に不可避な飛行時間のドリフトを参照イオンの飛行時間を使って追跡する上で大きな利益がある。 ・上記オンライン実験後、MRTOF-MSのイオン光学を再検討し、質量分解能を向上させた。 40Ca-40K質量比較において、精度および確度の向上の達成(相対質量精度δm/m&=6x10-8, 確度Δm(40Ca)=-0.2(2.4)keV)を得た。 ・超重元素領域の重い原子核には、質量校正用の安定核同位体が存在しないため、分子イオンを用いることにした。そのイオン生成用の電子スプレーイオン源を製作し、その微弱なクラスターイオンを高効率で捕集するための小型の高周波カーペット装置を開発した。これによって質量数200-300の間の殆ど全ての質量数の参照イオンを提供することができるようになった。さらに、このイオンのMRTOFでの測定から、分子イオンの組成を質量のみから一意に決定できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の開発課題の重要項目である多重反射型飛行時間測定式質量測定器(MRTOF-MS)の開発が大きく進捗した。とりわけ加速器施設の入射核破砕片分離器からの高エネルギー短寿命核を世界で初めてMRTOF-MSによって測定することに成功したとこは特筆される。また目的としている超重元素の質量のキャリブレーション用の分子イオンを生成する装置を製作し、実際にMRTOF-MSで質量測定できたことは研究の達成の重要な試金石となった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の達成のためのもう一つの重要開発項目は、反跳核分離器からの高速重イオンを減速・冷却・捕集する機構である。これには冷凍型ガスセルと高周波カーペット及びイオントラップ装置を開発する必要がある。 ・高速イオンビームを捕集のためにHeガスセルで熱化したイオンを直流電場と不均一高周波電場を組み合わせた高周波カーペット法を用いる。この方式は、イオンを電極表面から浮かせる従来の不均一高周波電場に重畳して可聴域周波数の進行波を加えたもので、その進行波に載せてイオンを高速に出口ノズルまで輸送するものである。 ・ガスセルから引き出された連続低エネルギーイオンビームを抵抗体線型高周波四重極トラップで蓄積・予備冷却し、平板型イオントラップで冷却バンチ化する機構を開発する。 ・上記開発成果を踏まえて、実際の超重元素の質量測定に使うための冷凍型ガスセル装置を製作し、オンライン試験に移行する予定である。 ・本年度に購入予定であった冷凍型ガスセル用のクライオヘッドは納期が間に合わないことが判明したため、予算を次年度に繰り越して、そこで購入した。
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