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2014 年度 実績報告書

革新的低速RIビーム生成法による超重元素の直接質量測定

研究課題

研究課題/領域番号 24224008
研究機関独立行政法人理化学研究所

研究代表者

和田 道治  独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, チームリーダー (50240560)

研究分担者 森本 幸司  独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, チームリーダー (00332247)
加治 大哉  独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 仁科センター研究員 (00391912)
小浦 寛之  独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎科学研究センター, 研究副主幹 (50391264)
羽場 宏光  独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, チームリーダー (60360624)
園田 哲  独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 仁科センター研究員 (60525583)
研究期間 (年度) 2012-05-31 – 2017-03-31
キーワード質量測定 / 超重元素 / MRTOF質量分析器 / 高周波カーペット / イオントラップ
研究実績の概要

本研究の実現のためには加速器施設の気体充填型反跳核分離器(GARIS-II)からの高速イオンビームを減速捕集しイオントラップで冷却バンチ化する必要がある。
1)高速イオンビームを捕集のためにHeガスセルで熱化したイオンを直流電場と不均一高周波電場を組み合わせた高周波カーペット法を用いる。この高周波カーペットの新しい輸送方式として提案されていたイオンサーフィン法を実用的な同心円形状の高周波カーペットに初めて適用した。この方式は、イオンを電極表面から浮かせる従来の不均一高周波電場に重畳して可聴域周波数の進行波を加えたもので、その進行波に載せてイオンを高速に出口ノズルまで輸送するものである。条件が合致すればカーペット表面に降ってくるほぼ全てのイオンを引き出すことができることを確認した。2)ガスセルから引き出された連続低エネルギーイオンビームを傾斜型線型高周波四重極トラップで蓄積・予備冷却し、平板型イオントラップで冷却バンチ化する機構を開発した。3)上記傾斜型トラップの改良型として、より蓄積効率が高くイオンの操作が容易なシリコン板を使った抵抗式線型高周波四重極トラップを開発した。本研究では四式の予備冷却トラップが必要であり、全系の効率向上に有効な開発成果である。
上記開発成果を踏まえて、実際の超重元素の質量測定に使うための冷凍型ガスセル装置を製作し、オンライン試験を実行した。205Frを用いた実験で分離器GARIS-IIから得られた量に対して、引き出された205Fr(半減期4秒)の効率は30%近くまで達していることが確認できた。さらに、213Ac(738ms), 215Ac(170ms), 216Th(26ms), 217Pa(3.6ms)を実際に引き出してαスペクトルの観測に成功している。これは、MRTOF-MSに入射すればすぐに質量測定が可能なことを示したことに相当する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の実現のためには、数多くの開発事項がある。質量測定装置(MRTOF-MS)の実用化、高確度質量校正法およびそのための参照イオン発生装置開発、高エネルギー短寿命核イオンビームの高効率・高速停止捕集法の開発、イオントラップを用いた冷却・輸送法の開発と、それらを実現するためのエレクトロニクス、ソフトウエア、真空技術、冷凍技術等枚挙に暇がない。それらは、数多くの難題を克服しながら実現にこぎつけた。
とりわけ、平成26年度に実現した、気体充填型反跳核分離器(GARIS-II)にクライオガスセル装置によるFr, Th, Ac, Pa同位体の高効率引き出し試験の成功は、本研究計画実現のための一番の山場であった。この成功は、平成27年度初頭以降に予定している、実際の超ウラン元素および超重元素の質量測定実験の成功を強く支持するものである。

今後の研究の推進方策

これまでの装置開発の成果と、オンラインでのガスセル装置から高効率引き出し成功の結果を踏まえて、ガスセル装置からMRTOF-MS装置へのビームガイダンスを整備し、平成27年度には、実際のPo, At, Fr, Ra, Ac, Th, Pa同位体の質量測定に着手する。
ビームガイダンスは、GARIS-IIに設置したクライオガスセル装置から引き出された低速ビームをイオントラップで一旦バンチ化し、2 keVのエネルギーで地下階のトラップ装置に打ち出す。ここで再度冷却バンチ化し、MRTOF-MSに入射させる。
40ArビームとDy, Tm, Yb, Lu, Ta, Ho, Yb, Hf標的を用いることで、Po, Fr, Ra, Ac, Th, Paの約30核種の同位体を生成できる。その内24同位体は質量の直接測定がまだなされていない新データとなる。
続いて、48Caビームと、Pb, Au, Bi, Tl標的を用いて、Fm, No, Es, Lr, Mdの同位体を生成し、核種を、さらに22NeビームとU標的を用いてNo同位体の質量測定に挑む計画である。
これらの測定が成功した後には、14NビームとCm標的を用いて、257-260Lrの生成と質量測定に挑む計画である。これらは、1)258Lrは理研で発見した113番元素278/113のアンカーポイントであり、その系列の質量を一気に決定すること、2)260Lrは高温核融合反応で生成されたとされる280/113の崩壊連鎖を確かめる決定的な結果となるはずである。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2014 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Wide-band mass measurements with a multi-reflection time-of-flight mass spectrograph2014

    • 著者名/発表者名
      . Schury, Y. Ito, M. Wada, H. Wollnik
    • 雑誌名

      Int. J. Mass Spectrom.

      巻: 359 ページ: 19-25

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.1016/j.ijms.2013.11.005

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Investigation of the ion surfing transport method with a circular rf carpet2014

    • 著者名/発表者名
      F. Arai, Y. Ito, M. Wada, P. Schury, T. Sonoda, H. Mita
    • 雑誌名

      Int. J. Mass Spectrom.

      巻: 362 ページ: 56-58

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.1016/j.ijms.2014.01.005

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A high-resolution multi-reflection time-of-flight mass spectrograph for precision mass measurements at RIKEN/SLOWRI2014

    • 著者名/発表者名
      P. Schury, M. Wada, Y. Ito, F. Arai, S. Naimi, T. Sonoda, H. Wollnik, V.A. Shchepunov, C. Smorra, C. Yuan,
    • 雑誌名

      Nucl. Inst. Meth. in Phys. Res. B

      巻: 335 ページ: 39-53

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.1016/j.nimb.2014.05.016

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [備考] 「短寿命原子核の高精度質量測定法MRTOFを開発

    • URL

      http://www.riken.jp/pr/press/2013/20130717_1/

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公開日: 2016-06-01  

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