研究課題/領域番号 |
24225002
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三浦 雅博 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20183626)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | 合成化学 / 普遍結合活性化 / カップリング / 有機機能性材料 |
研究実績の概要 |
近年、様々な機能性分子材料や生理活性物質の合成と相まって、効率のよい新しい結合形成反応の開発が、ますます重要な研究課題となっている。本研究では、有機化合物中に普遍的に存在する炭素―水素結合および炭素―炭素結合を選択的に活性化し、それらを切断することによって高度な分子変換を可能とする触媒系の開発を行うとともに、環境調和性の高い効率的な機能性分子の創成法を開拓することを目的としている。 交付申請書に記したように、平成27年度は、はじめに第二周期遷移金属のパラジウムおよびロジウムを中心金属とする一連の錯体触媒を調製または系中発生させ、これらの触媒存在下、種々の官能基を有する芳香族基質上でのカップリング反応を検討した。パラジウム触媒と酸化剤を組み合わせた分子内脱水素反応による縮環チオフェン誘導体の効率的構築法を見出した。また前年度見出したパラジウム触媒脱炭酸反応を伴う縮環法により、関連する高度縮環チオフェン誘導体を合成した。それらの物性評価において、高いホール輸送能を示す新規化合物を見出した。ロジウム触媒を用いる反応では、スルホンやチオアミドを配向性官能基とする芳香族基質とアルケンとの直接カップリング反応を開発した。一方で、ルテニウムを用いた直接的―炭素酸素結合形成反応も開発した。第三周期のイリジウムを用いた反応では、脱水素環化によるカルバソール合成法を開発した。さらに、安価で単純な第一周期遷移金属である銅のカルボキシラート塩を用いる新規反応も検討し、分子内脱水素環化によるインドリンやインドリノン類の合成法を開発した。この新手法は、医薬な農薬等の生理活性化合物の開発研究において有効に活用できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した第二周期遷移金属錯体触媒の調製を行った。また、これらを用いた炭素結合形成反応を検討し、パラジウム触媒では、直接的環化反応により優れた半導体特性を示す縮環チオフェン化合物を創製した。またロジウム触媒では、含硫黄官能基をもつ芳香族基質とアルケンとの反応を開発した。第三周期のイリジウムや第一周期の銅を触媒とした脱水素環化による含窒素複素環合成法を開発した。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように第一周期から第三周期遷移金属触媒の調製と活用の検討によって、昨年度までの成果に加え、さらに新たな炭素結合形成法や環形成法を見出したので、錯体触媒のさらなるファインチューニングのための新規配位子の設計・合成を継続的に検討し、より効率的な新合成法を確立する。また新規錯体触媒反応を用いた芳香族炭素環および複素環形成反応を電子共役材料の創成に活用するとともに、得られる生成物の物性評価を行い新規有機電子材料創製の設計指針を得る。
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