研究課題
平成25年度は、シトクロムP450BM3にパーフルオロアルキルカルボン酸を取り込ませる反応系によって、ベンゼンを高選択的にフェノールに変換できることを示した。また、トルエンやアニソールなどの一置換ベンゼンのオルト位が置換基に関係なく高位置選択的に水酸化されることを併せて明らかにした。これらの芳香環の水酸化反応では、より酸化されやすい生成物の過剰酸化反応を制御することが難しいが、シトクロムP450BM3とフッ素系デコイ分子を用いる反応系では、反応生成物が疎水性の高い活性部位からすぐに排出されるために、過剰酸化反応が抑制されることを明らかにした。これまでの我々の酸化反応系では、エタンを水酸化することはできなかったが、エタンの供給圧力を5気圧に上げて反応を行うことで、エタンの一級炭素を水酸化できることを示した。また、ガス状アルカンの供給圧力を5気圧とすることで、反応効率が大幅に改善されることも併せて明らかにした。さらに、デコイ分子を内包するシトクロムP450BM3の結晶化と結晶構造解析に成功し、デコイ分子がどのようにシトクロムP450BM3に取り込まれて、非天然基質の酸化反応を促進するのかを明らかにすることにも成功した。耐熱性P450を利用する反応では、本来の対象基質とは異なる芳香環の水酸化反応が60℃で進行することを見出した。鉄貯蔵蛋白質のフェリチン内部に形成される鉄二核錯体を利用する酸化反応系の構築では、これまで酸化活性は無いと考えられてきたフェリチンの鉄二核錯体に、僅かではあるが酸化活性があることを確認した。
1: 当初の計画以上に進展している
平成25年度は、ベンゼンを高選択的にフェノールに変換する高難度酸化反応系を確立することができた。また、デコイ分子誘導体を取り込んだシトクロムP450BM3の結晶化と結晶構造解析にも成功し、デコイ分子がどのようにシトクロムP450BM3の誤作動状態を引き起こすのかを原子レベルで明らかにするにも成功した。デコイ分子がどのように取り込まれているのかを明らかにすることができたことから、今後の研究が飛躍的に加速されるものと期待している。研究2年目でデコイ分子を内包する結晶構造解析に成功したことから、当初の計画より早く研究が進展していると判断した。
パーフルオロアルキルカルボン酸誘導体をデコイ分子として取り込ませたシトクロムP450BM3の結晶構造解析に成功し、この結晶構造からデコイ分子を目的とする反応に応じて最適化するための様々な知見が得られた。結晶構造情報を基にして、新規デコイ分子の開発を進め、エタンガスを高効率に水酸化することが可能な反応系を構築し、メタンの水酸化反応系の構築へと繋げたい。また、これまでデコイ分子を用いる反応では、反応機構の詳細が明らかではなかったので、取り込ませるデコイ分子のアルキル鎖長などを系統的に変化させた一連のデコイ分子を合成し、結晶構造解析により、デコイ分子の構造と酸化活性の相関を明らかにする。
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