研究課題/領域番号 |
24225004
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
渡辺 芳人 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 教授 (10201245)
|
研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
|
キーワード | 金属酵素 / 触媒 / ガス状アルカン / 水酸化反応 / シトクロムP450 / ベンゼン / 疑似基質 / 過酸化水素 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,常温・常圧下での高難度酸化反応を達成することを目標として,様々な新規手法を開発し、それらの新規手法を組み合わせるバイオ触媒開発を展開してきた。長鎖脂肪酸を選択的に水酸化するシトクロムP450BM3では、パーフルオロアルキルカルボン酸をデコイ分子(疑似基質)として取り込ませることにより,これまで不可能とされてきた変異導入を用いない基質選択性の大幅な変更に成功し、エタンやベンゼンの水酸化に成功した。また、パーフルオロアルキルカルボン酸のカルボキシル基をアミノ酸で修飾した第二世代のデコイ分子を開発し、活性の改善にも成功している。さらに、最近、フッ素原子を持たない第三世代のデコイ分子を開発している。過酸化水素を利用可能なシトクロムP450の機能改変では、高濃度酢酸溶液中で反応を行うと、本来の対象基質とはまったく異なる基質を酸化できること、さらには、わずか一残基の変異導入によって、過酸化水素駆動型のP450を作製可能であることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題では,常温・常圧下での高難度酸化反応を達成することを目標として,様々な新規手法を開発し,それらの新規手法を組み合わせるバイオ触媒開発を展開してきた.長鎖脂肪酸を選択的に水酸化するシトクロムP450BM3では,パーフルオロアルキルカルボン酸をデコイ分子(疑似基質)として取り込ませることにより,これまで不可能とされてきた変異導入を用いない基質選択性の大幅な変更に成功し,エタンやベンゼンの水酸化に成功した.また,パーフルオロアルキルカルボン酸のカルボキシル基をアミノ酸で修飾した第二世代のデコイ分子を開発し,活性の改善にも成功している.さらに,最近,フッ素原子を持たない第三世代のデコイ分子を開発している.過酸化水素を利用可能なシトクロムP450の機能改変では,高濃度酢酸溶液中で反応を行うと,本来の対象基質とはまったく異なる基質を酸化できること,さらには,わずか一残基の変異導入によって,過酸化水素駆動型のP450を作製可能であることを明らかにした.
|
今後の研究の推進方策 |
長鎖脂肪酸水酸化酵素のP450BM3に対して,デコイ分子を作用させることによりプロパンとエタンの水酸化に成功したが,メタンの水酸化反応は全く進行しなかった.メタンを水酸化するために,ヘム周辺を中心にアミノ酸を置換した変異体ライブラリーを作成してきたが,本年度も,変異体の作製を継続し,フッ素原子を含まない第三世代デコイ分子の開発と並行して進行させることで,メタンの酸化が可能な酵素とデコイ分子の最適な組み合わせの探索を行う.また,デコイ分子を用いる反応を大腸菌などの菌体内で行う反応系を構築し,高価な還元剤のNADPHが反応系中で再生される条件での物質変換を試みる.反応中心のヘムを置換する手法に関しては,シトクロムP450BM3のヘムを合成金属錯体に置換する手法を拡張して,鉄以外の金属を活性中心とする人工酵素反応系を開発し,デコイ分子を用いる手法と併用することで,高難度酸化反応の活性向上を試みる.さらに,過酸化水素駆動型シトクロムP450のヘムを置換することによる活性向上にも取り組む.過酸化水素駆動型シトクロムP450の反応では,酵素の失活が早く,長時間の反応が難しい問題点があるが,酵素の失活を防ぐための変異導入や,高度高熱菌由来シトクロムP450の過酸化水素駆動型への変換とさらなる変異導入により,高濃度の過酸化水素存在下でも失活しないシトクロムP450を作製する.
|
備考 |
名古屋大学大学院理学研究科生物無機化学研究室 http://bioinorg.chem.nagoya-u.ac.jp/
|