研究課題
本研究では、多種多様な脆い結合(犠牲結合)をデザインし、これらを高伸長ゲルに導入することにより、ゲルの破壊靱性を劇的に向上させるとともに新たな機能を付与することを目的としている。本年度は、アニオン性とカチオン性のモノマーを電荷比1:1で共重合させることにより、イオン結合によって架橋された超高強度ゲルを作製した。本ゲルはポリイオンコンプレックスからなるにも関わらず均一であり、極めて高い強度、延伸性、破壊靱性を示した。本ゲルを希薄な塩溶液に浸漬すると、膨潤度は殆ど増加しないのに力学物性が大きく低下することから、本ゲル内部のイオン結合はゲルの高強度化に極めて重要であることが分かった。動的粘弾性測定やDSC測定の結果、本ゲル中には強と弱の2種類のイオン結合が見出された。以上のことから、本ゲルの高強度化は、変形した際に弱いイオン結合(犠牲結合)が強いイオン結合の破壊に先立って広範囲に壊れることで、破壊に要するエネルギーが大きく増大するために起こることが示唆された。また本ゲルの特性として、いったん切断されても、破断面をしばらく接触させておくことでイオン結合が再形成し、自己修復するという、Self-healing現象を示した。本healingは室温下で起こり、条件によっては元の強度を完全に回復出来るという優れたものである。並行して、前年度の成果をさらに発展させ、電解質生体高分子(例えばプロテオグリカン、ヒアルロン酸)存在下で中性高分子ゲルを重合し、本ゲルの内部で再度同一化学種の中性高分子ゲルを合成することにより、超高強度かつ生体適合性を有するダブルネットワークゲルを作製した。本ゲルは、従来のダブルネットワークゲルと同程度の強度を有する上、優れた細胞培養能、生体内での低免疫反応性を示した。現在、医学部と共同して関節軟骨再生誘起材料としての応用研究が行われている。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、当初のねらい通り、非可逆的な共有結合だけではなく、可逆的な非共有結合も犠牲結合として働き、ゲルを高靱性化出来ることを示すことが出来た。またそれに付随する機能として、ゲルにSelf-healing能を付与することにも成功している。
ポリイオンコンプレックスを導入したゲルの非共有結合の様態を変えた際、ゲルの各種物性がどのように変化するかを検討する。例えば、化学種を変えることでイオンコンプレックスの強度を変える、また、ゲルに異方的な構造を導入することで、強度の異方性を示すゲルを開発する、などが考えられる。他にも、各種非共有結合を導入したゲルの開発を進める。
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