研究課題/領域番号 |
24226004
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
新野 秀憲 東京工業大学, 精密工学研究所, 教授 (40196639)
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研究分担者 |
吉岡 勇人 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (90361758)
澤野 宏 東京工業大学, 精密工学研究所, 助教 (40514295)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | 工作機械 / 生産 / 加工 / 研究開発 / 構造設計 |
研究実績の概要 |
本研究では,広域3次元ナノ形状創成機能とオンマシン複合計測機能を具備した高度機能集積マザーマシンシステムAIMSを実現すると共に,一連の研究開発プロセスを定式化し,新たな学術領域「工作機械工学」を確立することを目的とする.実際の研究では,当初の研究計画で設定した研究目的および到達目標に基づいてAIMSの実現に必要な要素研究,工作機械工学の体系化に関わる研究に取り組んだ.代表的な研究成果を以下に集約する. 第1に,「ナノ平面運動制御テーブルシステム(要素研究P1)」では,ハイブリッド駆動による0.3ナノメートルの位置決め分解能を有する位置決めテーブルシステムを開発した.第2に,「ナノ鉛直運動制御機能(要素研究P2)」では,磁性流体シールを用いた重力補償機能を組み込んだ1nmの位置決め分解能を具備する鉛直方向運動制御機構を実現した.第3に,「ハイブリッド駆動機構(要素研究P3)」では,電磁・空気圧アクチュエータによる旋回運動テーブルシステムを開発した.第4に,「インテリジェントスピンドルシステム(要素研究P4)」では,回転中の工具先端を超磁歪素子アクチュエータにより,微小駆動可能な高速回転主軸を実現した.第5に,「熱的・力学的安定化構造(要素研究P5)」では,空気静圧軸受支持,エアータービン駆動による熱変形抑制高速回転主軸を実現した.第6に,「オンマシン複合計測機能(要素研究P6)」では,工具刃先近傍のエバネッセント場を利用した10nm分解能の接触検知を実現した.第7に,「ハイブリッド加工機能(要素研究P7)」では,高密度エネルギービームと機械加工のハイブリッド加工について検討を行った結果,ファイバーレーザの組込みを計画した. 最後に,「工作機械工学の体系化」では,AIMSとその構成要素の研究開発プロセスを分析,定式化し,所期の目的のひとつである工作機械工学の体系化を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までに実施した研究の過程において,工作機械の設計原理である「母性原則の具備」,「原理・原則に基づく構造設計」,「適材適所を考慮した最適な先進構造材料の構造への適用」,「誤差発生要因の排除,あるいは最小化」,「熱的・力学的安定化構造の実現」といった研究代表者を中心とする研究グループの考える理想的な工作機械構造の全体像を追究しつつ,マザーマシンの構造設計の本質を常に念頭に置いて研究開発を推進してきた. その結果,要素研究,すなわち「ナノ平面運動制御テーブルシステム(要素研究P1)」,「ナノ鉛直運動制御機構(要素研究P2)」,「ハイブリッド駆動機構(要素研究P3)」,「インテリジェントスピンドルシステム(要素研究P4)」,「熱的・力学的安定化構造(要素研究P5)」,「オンマシン複合計測機構(要素研究P6)」のいずれについても,当初の研究目的や到達目標に対応した具体的な研究を遂行し,既に特筆すべき研究成果が得られている.なお,それらの研究成果については,印刷論文,著書,招待講演,国際会議,国内学会学術講演会,新聞掲載記事,公開行事等により,積極的に国内外で情報発信に努めている. 一方,新たな学術領域の創成をめざした「工作機械工学の体系化」については,本年度までに基礎研究を段階的に進めており,それらの一部については既に国内外に研究成果を継続的に発信している. 以上のように,それぞれの要素研究,研究全体の進捗状況を勘案した結果,特に現時点において研究が遅れていると判断される研究項目は見当たらず,当初の研究目的に対する本年度までの研究の達成度について「おおむね順調に進展している」旨,自己評価している.
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今後の研究の推進方策 |
現在までに遂行してきた「ナノ平面運動制御テーブルシステム(要素研究P1)」,「ナノ鉛直運動制御機構(要素研究P2)」,「ハイブリッド駆動機構(要素研究P3)」,「インテリジェントスピンドルシステム(要素研究P4)」,「熱的・力学的安定化構造(要素研究P5)」,「オンマシン複合計測機構(要素研究P6)」,ならびに「工作機械の体系化」は,概ね当初計画に基づいて進められており,平成27年度以降の本研究課題の今後の推進方策は,当初の研究計画・研究方法を大きく変更することなく遂行する計画である.所期の目的を達成するため,当初計画に沿って,平成27年度と平成28年度に段階的に次のような研究を進め,最終年度に高度機能集積形マザーマシンシステム(AIMS)の全体システムを構築する.なお,最終年度である平成28年度には,完成したAIMSの総合的な性能評価を行うことを計画している. 平成24年度から平成26年度の研究成果に基づいて,AIMSの主要構成要素に関する要素研究を概ね完了していることから平成27年度は,それぞれのシステム要素を実現する.さらに,Hyper-spectralセンサ等の計測機能を組み込んだ「オンマシン複合計測機能」を完成させる.一方,これまで「ハイブリッド加工機能(要素研究P7)について様々な高密度エネルギービームについて検討した結果,「ファイバーレーザシステム」をAIMSに搭載することを計画している. 平成28年度は,完成しているシステム要素,構造モジュールを順次,結合することにより,AIMSの全体構造を構築する.さらに,年度後半では完成したAIMSの静特性,動特性,熱特性の評価を行うと共に,各種機能試験,ハイブリッド加工実験を含む総合的な性能試験を行う.また,研究開発の過程で得られた設計情報,解析結果などの情報を集約,分析することにより,新たな学術領域である「工作機械工学」を体系化する.
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