研究課題/領域番号 |
24226005
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
土肥 俊郎 九州大学, 産学連携センター, 特任教授 (30207675)
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研究分担者 |
佐野 泰久 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40252598)
黒河 周平 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90243899)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2016-03-31
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キーワード | プラズマ融合CMP / 加工レート / 表面粗さ / 超難加工結晶 / フェムト秒レーザ / CMP / P-CVM / 疑似ラジカル |
研究実績の概要 |
本研究は、グリーンデバイス用ダイヤモンド、GaN、SiCなど超難加工材料の革新的超精密加工技術の確立を目指し、基板の極表層部に疑似ラジカル場を付与する前処理工程(1)、およびCMPとP-CVMを融合した仕上げ工程(2)の二段工程加工法を提案し研究開発を展開している。後者は、世界初の“Plasma fusion CMP(プラズマ融合CMP)”と呼称し商標登録を出願準備中である。 (1)前処理工程について, SiC 基板のラップ面にフェムト秒レーザ照射を施した部分のCMPを行ったところ,アブレーション部分において表面粗さの改善と約7倍の材料除去率改善が確認された.一方,ダイヤモンド基板においては,アブレーションが起こらなくても,光学的変化が起ることを発見した.基板表層部の粗さ・形状変化ではない何らかの変化を示唆しており,この領域のCMP材料除去率改善が期待できる. (2)仕上げ工程について、試作した2方式機種(A-type, B-type)の調整後、SiC、GaNの基本的加工特性を把握しつつダイヤモンドへの検討に着手した。 ①基本型プラズマ融合CMP(A-type): 疑似ラジカル場形成のためのポリシングと、疑似ラジカル場を効率的にエッチングするP-CVMを交互に繰り返す加工法で、ポリシングにより凸部にのみ疑似ラジカル場を形成してP-CVMに凸部選択性を付与し、段差を完全平坦化できることを実証した。またダイヤモンドにおいても基礎検討を開始し、本加工法の適用可能性を確認した。 ②挑戦的プラズマ融合CMP(B-type): SiC・GaNにおいては、従来のCMPと比較して加工レートが約10倍上昇し、表面粗さも大きく改善できた。GaN基板の加工変質層除去特性を評価したところ、通常のCMPと比較して、3倍以上速いことが分かった。これらのことを踏まえて、ダイヤモンド基板を加工し、従来研磨法の特性を上廻る加工特性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画通りに進展しており大きな成果が見込まれる。ニュースレターを発行し多くの関係者に情報発信するとともに、本研究プロジェクト協力者などと密なる連携を心がけ順調に進展できた。ここまでに得られた成果を整理・列挙する。 1)前処理工程としての疑似ラジカル場形成効果;フェムト秒レーザ照射によって,SiCのラッピング表面において加工速度増大効果が発現したことから、前処理として効果的な利用法の一つを提案できる.また,アブレーション発生はなくても光学的変化の発生を確認し、基板表面の粗さや形状変化を一切伴わない前処理法として加工能率を改善できる可能性がある. 2)疑似ラジカル場の形成速度が、基本型プラズマ融合加工における平坦化速度を決定づけると考え、SiCを用いて断面TEMにより詳細に検討した結果、機械的加工による結晶擾乱層の深さは、加工時間や回転速度には依存せず加工圧力のみに依存することを見出した。そして、乾式加工の7倍の平坦化速度を達成し、当初の期待以上の進展を得た。 3)挑戦型プラズマ融合加工において、プラズママイクロ電極を絶縁体で被覆することによりスラリーを用いても安定したプラズマを得ることに成功し、SiC、GaNの加工レートの大幅上昇に成功した。またSiCの場合、表面粗さの挙動を詳細に観察・考察した結果、加工初期段階で表面粗さが激減することが明らかとなり、加工条件設定のための重要な指針を得た。 一方、GaNの加工特性においては、加工変質層に起因すると思われるユニークなピークが出現することを発見した。このピークは、本加工法の場合は早期に出現し、本加工法の融合効果が裏付けられた。併せてカソードルミネッセンスによる加工変質層の評価を詳細に行った結果、通常のCMPに比べ3倍以上も速くダメージ除去に成功した。実際のプロセスを視野にいれ、本加工法の有効性を見出したことは、大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、当初から2段の加工工程を設定して検討を展開しているが、難加工材料のSiC、GaNについて疑似ラジカル場形成法と、プラズマ融合CMPによる基本的加工メカニズムを明確にし、これまでにない超難加工材料のダイヤモンド基板の高効率の超精密加工プロセスの構築を目指している。今年度は最終年度として、以下のことを中心に研究を展開する。 (1)前処理工程;SiC によって加工速度増大効果が確認された手法を,最終ターゲットとなるダイヤモンド基板への適用を試み効果を確認する.また,アブレーションが起こる前の光学的変化が生じるレーザ照射域において,その構造変化をTEM観察等を通して確認し,エッチングおよびCMP加工を施すことで材料除去率の違いの有無を見極める.以上により,特にダイヤモンド基板の2段加工プロセスにおいて,レーザ照射による加工速度増大効果の可能性を検討する. (2)基本型プラズマ融合加工においては、絶縁体試料では安定プラズマを発生させることが困難であることから、まず絶縁体基板用プラズマ発生電極を設計製作し安定化条件を検討する。疑似ラジカル場形成のポリシング条件に関しても最適化を図り、ダイヤモンド基板を高能率に平坦化可能であることを確認し、装置の実用化を目指す。 (3)挑戦型プラズマ融合加工法については、原理的に本加工法の優位性を確認している。しかし、加工中にCMPもしくは機械的ポリシングとP-CVMを同時に行うものであって、約100本のマイクロプラズマ電極が均一にプラズマを発生させる必要がある。そのためスラリー侵入を防ぎ、マイクロ電極などの構造と構成材料の見直しを検討する。そして、加工特性を把握しつつ加工メカニズムを追究し各種加工条件の最適化を図り、SiC、GaNそしてダイヤモンド基板の最適加工特性を得て、装置の実用化に備える。
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備考 |
【受賞関係】1)塩澤昴祐:ベストポスタープレゼンテーション賞, 精密工学会秋季大会( 2014年9月18日) 2〉磯橋藍:The first Doi Award, ICPT2014( 2014年11月21日)3)その他:関連受賞 土肥俊郎、他:岩木賞大賞, 第17回トライボコーティングシンポジウム(2015年2月27日) ニュースレターの発行:2014年4月、2014年12月
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