研究課題/領域番号 |
24226010
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
澤田 和明 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40235461)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | 集積化バイオセンサ / イメージセンサ / フィルタレス蛍光 |
研究実績の概要 |
本年度は37ミクロンピッチの蛍光・イオンイメージセンサの試作を協力半導体ファンダリにおいて行った.イオンと光のイメージングは実現することができたが,励起光と蛍光の分離には至らなかった.その原因を解析したところ,画素構造の問題点とセンサエリアの濃度分布に課題があることが明らかとなり課題の抽出ができた.その結果を受けて,現在協力半導体工場での追加プロセス(二重イオン注入)とレイアウトの変更をおこない,現在再試作を進めている. また,蛍光検出能力向上に向けた,信号読み出し方法を検討した結果,励起光強度と蛍光強度比 2000対1まで分離することに成功した.申請時は励起光強度と蛍光強度比 100対1であったのにくらべ20倍の向上に至った.これまで提案した“電流差分計測技術”に加え,2番目の解決策として基板バイアスを変更することで”電位の鞍”を急峻にすることで,励起光強度と蛍光強度比を800対1で検出できることを実証できた.3番目の解決策は,励起光および蛍光が入射される多結晶シリコン薄膜表面の凹凸を減少させることで,デバイス構造を変更せずに2000対1まで検出できるようになった.具体的には,通常の工程での多結晶シリコンの表面荒さ16nmであったのに対し,1.6nmの表面荒さにすることで上記値を達成できた. サブミクロンデバイスに向けて,画素のサイズを縮小化するため,申請時に提案した画素構成の詳細な検討および実際に試作を行った.その結果,6万画素,画素ピッチ2μmのイオンセンサチップの作製が出来,画素ピッチ1ミクロンのイオン・蛍光イメージセンサ製作の見通しがたった
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基盤研究(S)申請時の研究計画通りに進んでいるので,上記の自己評価を行った.以下,本申請時の研究計画と対比しながら自己評価の詳細を述べる. サブミクロンイメージセンサのプロセス開発に関して,目標通りイメージセンサのWellの濃度と深さの最適化,センシング領域のバリッドチャネル化,センシング領域の低ダメージ開口プロセスの検討を進め,サブミクロンイメージセンサのプロセス開発のめどが立ち,実際に2ミクロンピッチのイメージセンサ作製に成功した. サブミクロンイメージセンサの画素構成開発の目標に関して,シミュレーションにより検討を最初に行い,従来7つのトランジスタで構成した画素構成を,動作機構を工夫することで3つのトランジスタで実現する見通しが立ち,2ミクロンピッチで作製に成功し,ransduers2015@Alaskaで発表することになった.またレイアウトにより波長弁別性能が変化することを確認し,新しい製作において反映することとした. 蛍光・イオンマルチモーダルセンサによる細胞活動計測システム開発に向けて,ATP検出のために,apyraseを酵素としてセンサエリアに固定化し,海馬スライスからのATP放出のリアルタイム観察に成功した. 通常の光学顕微鏡とイメージセンサシステムの一体化したシステムを製作し細胞内外にイオンの動きを同時に可視化することができた. サブミクロン蛍光・イオンイメージセンサの実現にむけて,32×32画素でイオン注入条件を振ったデバイスを実際に作製し,課題の抽出が出来,ダブルインプラを用いた新たなプロセスを協力半導体ファンダリと構築できた.画素共有化技術を活用し 1024×1024画素(100万画素,画素ピッチ10ミクロン),および2000flame/secで信号を読み出す見通しバイオイメージセンサを実際に作製のめどがったった.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を元に実現するイオンイメージセンサは,これまで構築した協力LSIファンダリにおいて,フィルタレス蛍光・イオンイメージセンサプロセスを元に進める.まず,プロセスは,ダブルイオン注入プロセスにより形成する,センサ領域とCMOS領域それぞれのp-well濃度,深さを最適化したプロセスを用いる.また,画素構成は,光吸収深さを“電位の鞍”により明確に分離して検出できるようシミュレーションにより最適化した画素レイアウトで試作を進める. さらに,H26年度までに,測定する電流のベースラインを差し引いて測定することで,蛍光・励起光の分離能力が向上する知見を得たので,その知見を画素構成に適応する.イメージセンサにおいては電流を直接差し引く方法以外に,電荷転送技術により余分な電子を除くことが有効であると考え,その機能を持ったイメージセンサを作製する.この画素構成はセンサ領域で発生した電子を蓄積するためのフローティングディフュージョン(FD)を2つ備え,電荷検出深さwを変化させた時の微小な変化を小さな容量を持つFD2で読み出し,違いがないベース電流はFD3で読む構造となっている. 以上のように平成27年度は,プロセスと画素構成を変更した37ミクロンピッチのイメージセンサをまず実現し,その性能向上を見極めた後,多画素化ならびに高分解能化の設計と試作を平成27年度下半期から進め,平成28年度中には目標を達成する. 平成27年度下半期から海馬スライス等の細胞内外のイオンや神経伝達物質の挙動を計測する.この計測は,自然科学研究機構生理学研究所 鍋倉グループの協力を得ることとなっている.さらに,光学フィルタを使わず,電子的に複数の蛍光波長検出することができるという本センサの強みを生かして,2種類以上の蛍光物質の動きの撮像を行う.
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