研究課題/領域番号 |
24226012
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松井 佳彦 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00173790)
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研究分担者 |
松下 拓 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30283401)
白崎 伸隆 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60604692)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | 環境技術 / 環境材料 / 土木・環境システム / 反応・分離工学 / 水資源 |
研究実績の概要 |
1.超微粒子吸着剤の評価:活性炭の粒径(D50)を150 nmまで微小化することに成功した.1~2年活性炭吸着池で生物活性炭として使用した粒状活性炭は,超微粉砕すると吸着容量が増加し,通常の粉末活性炭と同等程度の性能を有することがわかった。カルキ臭の原因であるトリクロラミンの微粉炭および粉末活性炭による還元分解除去は,活性炭粒子内細孔拡散+細孔表面分解反応モデルで表現できることを明らかにした. 2.機能型凝集剤:ケギン型δ-Al30ポリカチオンを多く含むポリ塩化アルミニウム凝集剤を調整できた.この成分は,荷電中和力が高いものの加水分解性が低いため除濁性には課題がある可能性があると思われた.ヒ素をより効果的に凝集除去可能な凝集剤を検討し,凝集剤中のコロイドとポリマー成分,とくにその境界にあるような成分,すなわち,フェロンと30分から3時間に反応する成分がヒ素の除去に最も有効な成分であることを解明しつつある.これまでケギン型e-Al13ポリカチオンやケギン型δ-Al30ポリカチオンがヒ素除去に有効成分とされてきたが,本研究で見出したヒ素の除去に最も有効な成分は,これらとは一致しなかった. 3.紫外線酸化プロセス: システム最適化のため、VUV照射による1,4-ジオキサン分解効率の照射強度依存性を調べ、低照射で効率が高いことを示した。 4.膜処理プラント実験:セラミック膜ろ過装置を用いて,試作凝集剤による膜ろ過性の違いを検討した.塩基度を高めたポリ塩化アルミニウム凝集剤(高塩基度PACl)を前凝集処理に使用すると膜間差圧の上昇が抑制されることを昨年度までに示したが,今年度はこの理由として,高塩基度PAClを使用すると,膜細孔に近い大きさのアルミニウム粒子が少ないことが関連していることを明らかにした.さらに,溶存有機物濃度の高い原水では,主たるファウリング物質はアルミニウムのみならず有機物質であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
① 吸着処理:吸着量増加効果は活性炭が疎水的な場合や吸着質が高分子または疎水性の場合に見られ、吸着量増加をShell Adsorption Modelで説明し、さらに同位体顕微鏡を使った内部吸着量分布の世界で初めての直接観察等により実証した。また、活性炭の超微粒子化により臭気物質トリクロラミンや放射性ヨウ素などの除去性が向上し、さらにウイルスが吸着可能になり、これには表面荷電が関連していることや、経年使用した粒状炭を超微粉砕すると吸着容量が増加することから、未利用内部細孔が残存していることがわかってきた。 ② 機能型凝集剤:重合時のモノマー含有量を低くすることで、低アルミニウム残留性と高い除濁性を有する高分子アルミニウム凝集剤(新規のポリ塩化アルミニウム)の製造に成功した。凝集剤中有効成分はケギン型e-Al13ポリカチオン(従来の定説)のみではなく、ウイルスを効果的に除去するためには高コロイド荷電量を示すケギン型δ-Al30ポリカチオンを含む成分が有効なことが分かった。 ③ 紫外線酸化プロセス:シリカ繊維+TiO2触媒と紫外線あるいは真空紫外線ランプによる分解実験を行い、難分解性物質(1,4-ジオキサン)が処理可能なこと、その際に分解副生成物の生成も低いことなどを示した。さらに、共存陰イオンの分解阻害効果を定量化した。 ④ 凝集-膜ろ過:セラミック膜ろ過において、高塩基度(70%)ポリ塩化アルミニウム(PACl)を前処理に用いた場合の低膜ファウリング性にはアルミニウムの粒径やSiが関与していること、さらに、溶存有機物濃度の低い原水では、主たるファウリング物質がSiを含むAlであることから、塩基度を限界の90%まで高めることにより、さらに膜ファウリングを抑制しうることを見出した
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の計画では,A:吸着処理では微粒子化による使用済活性炭リユースなど,B:凝集処理では機能特化型凝集剤の開発,C:酸化処理では副生成物の評価・システムの最適化,D:高度膜処理では大型パイロットプラント実験による凝集・吸着処理との併用を実施予定となっており,予定通りの方針で研究を進める.さらに,超微粒子活性炭を使用した場合の極低濃度の残留性を評価する.真空紫外線酸化処理の副生成物の評価などを終了し,共存物質との反応も考量した反応速度の定量化を検討し,システムの最適化を検討する.高度膜処理実験については2か所の実験フィールドで装置を運転し検討し,成果をまとめる.
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