研究課題/領域番号 |
24226014
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田畑 仁 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00263319)
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研究分担者 |
関 宗俊 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40432439)
松井 裕章 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80397752)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | ゆらぎ / スピングラス / 酸化物エレクトロニクス / マグノニクス / 確率共鳴 |
研究実績の概要 |
本研究を開始後達成した最も顕著で新しい成果として、磁気抵抗(電荷+スピンの2つの自由度をもつ電子の流れ)によるスピン情報の取扱いに加え、スピン波(スピンの角運動量情報)情報を扱う事に至ったことである。これによりスピンの自由度、応答の高速性のみならす、ジュール熱損失が不可避の電流伝搬ではなくスピン角運動量伝搬(スピン流)による低消費電力性機能を併せ持つ新規脳型コンピュータ実現に道を拓く点で、大きな可能性を秘めた成果であると思われる。 このような魅力的なスピン波デバイス(マグノニクス)ではあるが、これまでの研究ではスピン波を発生・制御するための基礎原理の発見やシミュレーションを用いたデバイス設計の指針などに重点が置かれていた。特に確率的動作素子と入力履歴依存出力素子という従来にない機能を持つデバイスを作製できれば、脳機能を模倣したコンピュータの作製が可能になると予言されているが、スピン波デバイス作製はほとんど行われていなかった。今回、準安定系の“ゆらぎ”を取り入れた材料を創製し、従来にない機能を有する入力履歴依存出力素子を作製し、基礎特性を検証することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
評価計測装置を1年前倒しに導入することにより、当初の目標を超える研究進展がみられた。 加えて、昨年度(本プロジェクト2年目)から極めて優秀な修士課程学生が、本プロジェクトに参画してくれた人的要因も大きい。当該学生の多大な貢献のおかげで加速度的に研究の進展が達成できた。 当該修士学生1人の業績に限ってみても、得られたスピンゆらぎ研究結果は物性物理分野で定評のある本論文誌:Phys.Rev.Bに2報(2014,2015年)、掲載率が厳格(約4割)な事で知られる応用物理学分野の速報誌:APEXにも1報掲載(2015年)、国際会議8件、国内会議15件発表(共著者含む)の内外情報発信実績あり。また46th SSDM Young Researcher Award (参加者1000人規模の国際会議での受賞内定)、電子情報通信学会エレクトロニクスソサエティ優秀学生表彰に選出され、さらに学内においても工学系研究科長賞(最優秀)並びに、総長賞(2015年3月)を獲得しているなど、内外でその研究成果が高く評価されている。
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今後の研究の推進方策 |
脳機能模倣型のスピングラス情報処理素子の作製予定。 具体的な磁性素子としてハードディスク等に用いられているトンネル磁気抵抗素子をモデルとして、磁性(100nm)/絶縁体(1~2nm)/スピングラス材料のスピントンネル接合素子(MTJ)において入力信号パルスの強度、パルス幅を違えることにより多入力を実現し(ハミルトニアン第1項)、トンネル接合の障壁を閾値として(同第2項)、スピントンネル電流を検出することにより、脳型低消費電力デバイスを実現させる。(図左)スピングラスを認知・判断機能素子としてスピンインジェクション層に使用する事で、最適解と照合(認知・判断)するフィルター機能を評価する。 今後懸念される問題点として、建物耐震工事の為、実験室、居室が存在する部屋の移動の可能性があり、実験等の実施が一時期停滞する可能性が懸念される。本件についての解決方法として、移設時期の段階的な調整、あるいは研究期間の延長等で対応する事を検討している。
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