研究課題/領域番号 |
24226015
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
戸田 裕之 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70293751)
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研究分担者 |
桑水流 理 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40334362)
小林 正和 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20378243)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | リバースエンジニアリング / 最適化 / 粗視化 / 放射光CT / イメージベースモデリング / 有限要素法 / 延性破壊 / 低サイクル疲労 |
研究実績の概要 |
リバース4D材料エンジニアリングの開発(R4ME)は,その要素技術の開発が終わり,既にデモンストレーター研究の検証と各要素技術の高度化のステージに入っている。2つの要素技術のうち,粗視化に関しては,第二相粒子,結晶組織などのサイズ,形状,空間的分布などの粗視化に供する設計変数を調査し,合計45個の設計変数を計算している。この内容,および正規化の可否などに関して検討を重ねた。また,材料のマクロ特性との関係を統計学的に解析するにあたり,設計変数を低次元化するデータマイニング過程では,重回帰分析,主成分分析,CARTなどどのように用いるかを検討した。 最適化プロセスについては,代理モデルを構成する人工ニューラルネットワーク(ANN)をサポートベクターマシン(SVM)に変更することで,寡試行最適化に適した最適化手法を構築した。 さらに,全体をまとめる方法論を検討し,R4MEの適用対象を「多数ミクロ組織制御」と「単一ミクロ組織制御」の2つのケースに分け,材料工学,機械工学の様々な課題にR4MEが適用可能なようにした。デモンストレーター研究Iでは,アルミニウム中の水素ポアが損傷に及ぼす影響を,デモンストレーター研究Ⅱでは,アルミニウム鋳物中のミクロ欠陥からの疲労破壊制御を,デモンストレーター研究Ⅲでは,アルミニウム合金の多結晶粒組織制御の研究を推進した。上記ⅠおよびⅡでは「多数ミクロ組織制御」と「単一ミクロ組織制御」のコンセプトを適用した。またⅢでは,放射光CT実験の画像データから結晶粒モデルを作成し,結晶粒のイメージベースモデルを結晶塑性有限要素解析する環境を整えた。 各要素技術およびR4MEの適用に関する成果発信を論文,国内・国際会議での発表,シンポジウムなどのオーガナイズを通じて活発に行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)粒子やミクロ欠陥といった材料組織因子をサイズ,形状,空間分布など,様々な観点から定量化する粗視化手法を確立した。また,重回帰分析,主成分分析,CART等を組み合わせて設計変数を低次元化する粗視化プロセスについても確立されつつある。 2)最適化に関しては,以前に提案した最適化プロセスの内,代理モデルを構成する人工ニューラルネットワークをサポートベクターマシンに変更し,Infill sampling基準により代理モデルを逐次更新するという前年度までに開発した最適化アルゴリズムに組み入れた。これらは,既に実装も完了し,試行を繰り返して改良を進めている。 3)リバース4D材料エンジニアリング(R4ME)による材料開発方法論の検討により,R4MEの適用対象を「多数ミクロ組織制御」と「単一ミクロ組織制御」の2つのケースに分け,材料工学,機械工学の様々な課題にR4MEが適用可能なようにした。実際,3つの全く異なるデモンストレーター研究を推進し,特にデモンストレーター研究I(アルミニウム中の水素ポアが損傷に及ぼす影響評価)では,繰り返し試行を行い,方法論,各要素技術の問題点の洗い出しとその改良を進めることができている。 この様に,ほぼ計画通りに研究が進行し,開発完遂に向けて順調に推移している。強度,疲労破壊,結晶塑性と幅広いテーマに適用することができており,実用性も担保されつつあると判断する。今後,大きな技術課題はないものと判断する。デモンストレーター研究Ⅲ(アルミニウム合金の多結晶粒組織制御の研究)では,計算量が多く,多数の結晶粒を含む計算モデルを作成し,イメージベース結晶塑性有限要素解析を実行するのが難しいという計算力学上の問題はあるものの,これは将来的な計算機技術の向上による改善が期待される。 これらの理由で,研究はおおむね順調に進展しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度では,前述した目的を達成するために下記の研究を実施する。 1)方法論に関しては,各グループでの3つのデモンストレーター研究の繰り返し実行を通じて,R4MEの方法論を確立する。R4MEの試行が進んでいるデモンストレーター研究Ⅰ以外でも,デモンストレーター研究Ⅱでは,アルミニウム鋳物中のミクロ欠陥からの疲労破壊制御を,鋳巣,シリコン粒子,金属間化合物を考慮したイメージベースシミュレーションの実施と累積疲労損傷の評価により,「単一ミクロ組織制御」型の試行および改良を推進する。デモンストレーター研究Ⅲでも,アルミニウム合金の多結晶粒組織の制御に関する試行を行い,実際の多結晶材料の変形の忠実な再現とその解析を行う。 2)最適化に関しては,サポートベクターマシンによる寡試行最適化の適用アルゴリズムを改善し,さらに完成されたものにする。粗視化に関しても,最適化結果を粗視化することで粗視化プロセスの有効性の検証を行ったり,必要があれば,設計変数の改良,追加パラメーターの検討などを行い,粗視化法を完成させる。また,サイズ・形状・空間分布などのカテゴリ別に区分する現行の手法から離れ,様々な観点からカテゴリ間パラメーターの相対的加重値を検討する手法を採用する。
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