研究課題/領域番号 |
24226018
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安田 秀幸 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60239762)
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研究分担者 |
柳楽 知也 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00379124)
吉矢 真人 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00399601)
森下 浩平 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00511875)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | 凝固工学 / 結晶成長 / 鋳造工学 / 組織制御 / その場観察 / マイクロアロイング / 放射光 |
研究実績の概要 |
本課題の特徴は、金属合金の凝固現象を時間分解・その場観察により明らかにし,材料組織ベースで凝固ダイナミクスの体系化とモデル構築を目指している点である。平成26年度に引き続き、高温現象(凝固現象)を実証的に明らかにするためのその場観察手法の開発とその手法を利用した素過程の解明、モデル化を行った。 A.その場観察による素過程の実証とモデル化: 固液共存領域の変形の観察では、印加された力をより正確に測定することが可能になった。この手法を用いて、Fe系およびAl系合金の変形過程を観察し、粒界と固液界面エネルギーの相対的関係が固相粒子間の結合に大きく影響し、変形機構や変形応力を支配することが明らかになった。また、凝固組織形成に及ぼす外場(超音波)の影響をその場観察により明らかにし、対流と振動の寄与を分離して理解できた。 B.ミクロモデルによる補完的検証: Fe-C系などで観察されたマッシブ的変態における核生成と成長が繰り返す成長モードにおいて、異相界面の役割を微視的なアプローチにより明らかにするとともに、フェーズフィールドモデルを用いた検証ができた。 C.ミクロ/マクロ統合モデルの構築と検証: 固液共存領域の変形モードと凝固組織(界面エネルギーの寄与)との関係に基づいて、ミクロ/マクロモデルにおける固相粒子間の相互作用の表現に物理的意味を明確にすることができた。さらに、モデルを用いた数値計算によりバンド偏析を再現した。 D.マイクロアロイングの科学: Al-Si合金、Sn合金に加えて、Fe-C系合金(鋳鉄)の組織制御におけるMgの役割を、微量元素を制御した複数の合金の凝固過程を比較することにより明らかにできた。グラファイトの形態制御に対する基盤的な知見を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の進捗状況を各項目に分けて述べる。 A.その場観察による素過程の実証とモデル化: Fe系およびAl系合金を対象とした固液共存領域の変形における組織変化、変形力の定量評価の実現は、Cのミクロ/マクロ統合モデルに必要不可欠な情報であり、このような定量データを獲得できている。また、比較的高速な現象である超音波下での凝固組織形成の観察を実現し、核生成サイトの影響などを実証的に確認しており、順調に進展していると判断している。 B.ミクロモデルによる補完的検証: 観察で見いだされたFe-C系などで観察されるマッシブ的変態に対して、微視的スケールの解析およびそれらの知見を用いた現象論的解析が実現し、マッシブ的な変態などの現象の理解を深化させることができた。項目A、Bとの連携も実現しており、順調に進展していると判断している。 C.ミクロ/マクロ統合モデルの構築と検証: 固液共存体の変形などのミクロ/マクロ統合モデルの基礎を確立できた。この点で研究は進展している。最終年度である平成28年は、項目AとBの成果を反映したモデルの深化が求められる。順調に進展しているが、各項目が連携した成果を上げるために注力が必要である。 D.マイクロアロイングの科学: Al-Si合金、Sn合金、Fe-C系合金(鋳鉄)における微量元素の役割を、放射光を利用した時間分解・その場観察、微量分析などで明らかにできており、順調に進展していると判断している。最終年度は各合金系の結果を踏まえ、統合した学理の構築を目指す必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の最終年度である平成28年度では、本課題の目的である実証的な理解に基づく凝固ダイナミクスのミクロ/マクロ統合モデルの構築、マイクロアロイングに対する体系化を目指す。 A.その場観察による素過程の実証とモデル化: 固液共存領域の変形では、これまでに構築したモデルの検証および高度化のために、圧縮・引張の差異などを明らかにする。超音波のデンドライト成長に及ぼす影響では、デンドライトアームの溶断促進の機構の解明に注力する。 B.ミクロモデルによる補完的検証: マッシブ的変態における核生成と成長が繰り返す成長モードにおいてミクロスケールのモデルに基づいた数値計算の結果とその場観察結果(透過像、回折像)を比較・検証し、ミクロスケールからマクロスケールにわたる整合性のある理解を目指す。 C.ミクロ/マクロ統合モデルの構築と検証: その場観察によるミクロスケール(固相粒子スケール)の変形機構を取り入れたマクロモデルにより、固液共存体のせん断に伴う変形と偏析形成を再現できるようになった。次年度は、固相粒子間の相互作用と凝固組織の関係を体系化し、ミクロ/マクロ統合モデルの応用範囲の拡大と検証を行う。 D.マイクロアロイングの科学: これまでのAl-Si合金、Sn合金、Fe-C系合金(鋳鉄)における微量元素による組織制御の原理を整理し、マイクロアロイングの科学と言うべき学理の構築を目指す。
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