研究課題/領域番号 |
24226020
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研究種目 |
基盤研究(S)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
図子 秀樹 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (20127096)
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研究分担者 |
花田 和明 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (30222219)
藤澤 彰英 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (60222262)
出射 浩 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (70260049)
永島 芳彦 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (90390632)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | プラズマ・核融合 / 複雑・開放系 / 多階層 |
研究概要 |
核融合炉の定常化に向けた研究課題として“多階層複雑・開放系における粒子循環物理とマクロ制御”という観点で終端・対向面、開磁気面、閉磁気面を特徴とするプラズマ対向壁(PFC), 周辺開磁気面領域(SOL), 高性能プラズマコア領域(CORE)から構成される入れ子状の複雑系における粒子循環・密度分布に関わるマクロ構造形成・伝達過程とその制御性を調べることが目的である。具体的には温度制御可能な対向壁(Hot-Wall ; HW)を2カ年計画でQUESTに設置し、壁でのリサイクル粒子循環過程の定常化・制御化を試み、PFC-SOL-COREのおける粒子循環の相互干渉性を調べることである。 初年度の実績としてまずハードの面では1)HWの熱設計を再度実施し、350-500度の加熱が可能であることを確認し、2)高温壁パネル、輻射シールド板の設置構造、仕様を決定し、3)必要なパネル等を購入した。H25年度に設置を行う。研究としては”多階層粒子循環系”の各系において、プラズマ粒子並びに中性粒子それぞれの動特性を調べた。これは放電管壁を室温-100度で維持して実施した。①壁吸蔵・放出遷移と動特性の現象に関しては四重極ガス分析器を用いた燃料水素、ヘリウム粒子の同時実時間計測から壁保持率の決定、ダイバータ部に設置したPdCu水素原子束計測プローブによる入射束の実時間計測に世界で初めて成功した。②SOLでの揺らぎの動特性に関しては高速カメラと局所プローブによる揺らぎの統計解析を行い、運動量注入のない高周波電流駆動時にもプラズマ流れが存在することを確認した。③coreプラズマの高性能化に関しては高ポロイダルベータ値(4-5)のプラズマ生成と維持に成功し、トカマク配位の5分間維持を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究は予想を上回って進んでいる。HWの熱設計、構造設計を実施し、350-500度の範囲でHWの設置が可能であることを確認した。構造設計により、高温壁-加熱板-冷却板-輻射シールド板等の仕様を決定した。H25-H26年度に掛けて設置し、実験を実施する。 入れ子状の構造を持つ、PFC-SOL-COREの領域の相互干渉を明らかにして、最表面の粒子循環をHW温度制御により能動制御することを研究目的としている。それぞれの領域での研究が同時に前進することが大切であり、各領域での個別研究と統合研究が予想以上に前進した。1) PFC領域では、水素、ヘリウムの分圧同時計測を行い、燃料注入率、排気量の実測から壁吸蔵から放電後直後の壁放出の遷移状態の変化をそれぞれ実測し、さらに水素原子束プローブの実測に基づき前者が水素原子が支配し、後者は分子が支配的であることを実証した。2)SOL領域では高速カメラを用いた2次元の揺らぎ計測とその統計解析から導かれる”偶然力”の可視化手法の確立と可動プローブを用いた局所揺らぎ計測とその統計解析に基づき定量化に取り組んだ。非誘導方式による自発ダイバーター配位形成に伴うコヒーレント揺らぎの発見とそれを用いたSOL流れの観測へと大きく発展させることができた。3)CORE高性能化に関してはサイクロトロン波を用いた非誘導電流駆動による世界初の高ベータポロイダルプラズマの定常化に成功した。 3つの分野を統合した粒子循環マクロ制御を試みた。水素発光強度をアクチエータとして注入ガス量のフィードバックを行い系内リサイクリング制御を行うことにより5分間の定常トカマク配位の実現に成功した。これらの成果は、当初の計画を大きく上回るものであり、その内容は核融合の国際会議であるFEC、Nuclear Fusion 誌、プラズマ・核融合学会誌にそれぞれ発表した。
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今後の研究の推進方策 |
24年度に1)高温壁(HW)のための温度詳細設計(熱特性、熱応力等)を終え、工学設計に引き続いて高温壁パネル、輻射シールド板、熱電対等を購入整備した。また物理研究としては2)駆動プローブと高速カメラを用いたSOL流速分布計測、3)高ポロイダルベータ(~ 4-5)平衡配位における高電流駆動(35kA)とその維持(~80秒)、4)高周波による定常トカマク運転を行い5分間維持に成功するなど定常高温プラズマの維持等において成果を収めることができた。粒子制御に関しては5)PdCu薄膜を用いたダイバーター領域での水素透過束を計測し、その領域での入射水素原子束の絶対評価を世界ではじめて実施した。6)さらに系内の静的ガスバランスを実測し、循環粒子束制御法を開発することにより5分間の定常運転を切り開いた。特に燃料水素と核反応生成物であるヘリウムを少量添加し、両者の循環を同時に計測することに成功している。 このような現状を踏まえて、25-26年度にかけては高温化、温度制御化を完了予定なので、それと平行して、電流駆動用パワーの増強を図る。今年度は1)高温壁(タングステン溶射高温パネル、加熱パネル、加熱ヒーター、温度制御用輻射シールド板、構造材ならなる)を製作設置することを目標とする。さらに2)より高パワーでの運転を行うために高周波発振管の増強を図る。実際の実験では基本配位を単一ヌル-divertor配位として 長時間運転をめざす。そのために排気系のクライオポンプを増設する。また放電管の一部に冷却機能を付加し系全体の熱収支を完成させ、温度平衡のもとでの粒子循環制御の本格的実験に移行する。これらの経費はセンター事業費、双方向共同研究、筑波大学との連携経費で別途措置する。
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