研究課題
核融合炉の定常化に向けた研究課題として“多階層複雑・開放系における粒子循環物理とマクロ制御”という観点でプラズマ対向壁(PFC), 周辺開磁気面領域(SOL), 高性能プラズマコア領域(CORE)から構成される入れ子状の複雑系における粒子循環・密度分布に関わるマクロ構造形成・伝達過程とその制御性を調べることが目的である。具体的には温度制御可能な高温壁を設計・製作・設置し、壁でのリサイクル粒子循環過程の定常化・制御化を試み、各階層間粒子循環の相互干渉性を調べることである。ハード面では1)高温壁のための温度詳細設計(熱特性、熱応力等)、工学設計に基づき、高温壁パネル、輻射シールド板の制作、熱電対、加熱制御電源の購入、表面タングステン溶射等を完了した。物理研究としては2)ガス入射変調による粒子循環システムの応答関数の決定、3)駆動プローブによるSOL流速分布計測に加えて不純物発光線のDoppler計測による自発トロイダル回転(<20km/s)の確認、4)高ポロイダルベータ(~ 4-5)による自発ダイバーター平衡配位の発現、5)10分間定常トカマク維持の成功、6)第2高調波による駆動電流66kA達成など、各階層で主要な個別課題に関して大きな成果を収めることができた。このような粒子循環系において、中性粒子を介した①壁吸蔵・放出遷移と動特性の現象 特に伝達関数の手法を導入した現象の予測精度の向上,②SOLでのblob動特性と揺動駆動、熱流束、粒子束およびプラズマ流れの相関,③Ware pinchのない系でのcore密度の中心ピーク化や運動量入射のない系における自発プラズマ流れの発現とその維持に着目する。本研究では特に、燃料粒子の外部からの注入が、1)金属内部への水素透過やその保持、2)SOLへの密度揺らぎの増幅ならびに中性ガス圧の揺らぎ増大、3)プラズマ内部密度分布並びにプラズマ回転分布の修正と自己回復 などをもたらす機構の解明と予測・制御をめざす
1: 当初の計画以上に進展している
研究は予想を上回って進んでいる。まず、ハード面の進捗は、実際の定常プラズマ運転と100点ほどの熱電対による熱バランス計測により放電管全体への熱量を決定し、それに基づき高精度で熱設計、構造設計を実施し、350-500度の範囲でHWの設置が可能であることを確認した。容易な取り外しが可能なように-加熱板-冷却板-輻射シールド板等の仕様を決定した。26年夏に装着予定である。物理研究における進捗は以下の通りである。入れ子状の構造を持つ系ではそれぞれの領域での研究が同時に前進することが大切であり、各領域での個別研究と統合研究が予想以上に前進した。1) PFC領域では、水素、ヘリウムの分圧同時計測による静的粒子バランスに加えて、摂動インパルス法を世界で初めて適応して粒子循環過程の応答関数を決定した。表面堆積層の成長、層内捕捉サイトを考慮したモデルかを進め長期設置試料の吸蔵特性との比較に成功した、2)SOL領域では高速カメラを用いた2次元の揺らぎ計測から流れの揺動成分統計解析を行い”偶然力”の可視化に取り組んだ。Machプローブによるプラズマ流れと磁力線の方向についての知見を得た。3)CORE高性能化に関してはサイクロトロン波を用いた非誘導電流駆動により第2高調波では世界初の66kAの達成、プラズマ回転の自発発現とその維持、自発ダイバータ配位の自発形成とその維持機構の解明に成功した。3つの分野を統合した粒子循環マクロ制御を試みた。水素発光強度をアクチエータとして注入ガス量のフィードバックを行い、10分間の定常トカマク配位の実現と回転の維持、系内ガス圧力の維持、系内リサイクリング制御に成功した。これらの成果は、当初の計画を大きく上回るものであり、その内容は核融合の国際会議であるFEC2014に発表が認められている。
24-25年度では1)高温壁の温度詳細設計(熱特性、熱応力等)、構造設計に基づき、高温壁パネル、輻射シールド板の制作、熱電対、加熱制御電源の購入、表面タングステン溶射等を実施した。物理研究としては2)亜音速領域でのSOL流速の観測と自発プラズマ回転の発現過程とその維持、3)ダイバータ配位の自発形成と自己維持機構を平衡解析の観点で取り組み捕捉高速電子の役割と負三角度の効果を解明、4)ガス注入の最適化により定常トカマク運転とプラズマ回転の維持の10分間同時達成、5)第2高調波電流駆動により66kAを達成するなど、成果を収めることができた。粒子制御に関しては6)PdCu薄膜を用いたダイバーター領域での水素透過束の多点計測、7)静的ガスバランスの限界を克服するために、新たにガス入射変調による粒子循環システムの応答関数を世界で初めて見いだすなどの成果を上げた。26年度ではいよいよ本格的な高温壁を世界で初めて設置し、温度制御下での粒子循環に取り組む。具体的には1)高温壁(タングステン溶射高温パネル、加熱パネル、加熱ヒーター、温度制御用輻射シールド板、構造材)をQUEST装置内部に設置する。高温壁を用いることにより、これまで実施したガス変調、パワー変調、相互作用領域変調に加えて新たに壁温度変調に対する応答関数の取得とそれによる粒子循環特性の解明に取り組む。一方物理研究としては 特に2)コアプラズマ性能では、電流駆動用パワーの増強と28GHz第2高調波(筑波大学との連携)によるさらなる駆動効率の向上に取り組み、100kAの電流駆動をめざす。 さらに3)こうした非誘導電流駆動プラズマのもとで電子と結合する高周波のみを用いた自発プラズマ回転機構の解明に取り組む。3) 単一ヌル-divertor配位などでの 長時間運転における粒子供給・粒子循環とプラズマ電流の維持プラズマ回転の維持に向けた制御手法の確立を目指す。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (24件)
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