研究課題/領域番号 |
24227005
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
安藤 敏夫 金沢大学, 数物科学系, 教授 (50184320)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | 原子間力顕微鏡 / 高速AFM / タンパク質 / 細胞 / ダイナミクス / イメージング / 走査型イオン伝導顕微鏡 |
研究概要 |
代表者が世界に先駆けて開発した革新的な高速原子間力顕微鏡(以下、高速AFM)をベースに、以下4項目を本研究で推進している。①分離精製されたタンパク質分子の機能動態映像からそのタンパク質の詳細な機能メカニズムを解明、②分子よりも遥かに大きい生きた細胞などを高速観察するための技術開発を進め、生きた細胞の表面や、分離調製されたオルガネラの表面で起こる動的現象をin situイメージングし、種々の動的プロセスを探索・解明、③極めて柔らかい生きた真核細胞表面の動的高解像イメージングを可能にする非接触型高速走査型プローブ顕微鏡(以下、高速nc-SPM)を開発。④光学顕微鏡像と高速AFM像の同時取得を可能にする複合機の開発と応用研究。2年目に当たる平成25年度では、以下の研究を行った。①については、以前から進めてきたミオシンVの歩行運動の更なる詳細機能解明に加え、微小管上を運動するダイニン、DNAの分解・修復を行うRecBCD、シャペロニンClpB、バクテリアの鞭毛のHookの長さを決めていると推測されているFliKなどの観察を行った。ミオシンVについては、ATP分解反応で解放されるエネルギーの利用についてこれまでの常識を覆す画期的な成果を得た。ダイニンについては、微小管に活性・不活性状態があることを見出した。FliKについては、Hookの長さ決定機構に結びつく分子特性を得ることができた。②については、広域を高速走査可能なスキャナーの開発に成功し、エンドサイトーシスなど生きた細胞で起こる動的現象を可視化できるまでになった。③については、前年度に引き続き走査型イオンコンダクタンス顕微鏡(SICM)のイメージング速度を上げるための要素技術の開発を行い、イオンコンダクタンスを従来の約400倍の速さで計測できるまでになった。④については、倒立型蛍光顕微鏡との複合機を試作し、全反射蛍光観察と高速AFM観察を同時にできるまでになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、大きく2つに分類される。①すでに完成させた高速AFMによるタンパク質の挙動解析とそれによる機能発現機序の解明と、②高速AFMの適用範囲を拡大させるための技術開発とその有効性の実証。①については、ミオシンVで予想を超える画期的な成果が得られ、新たに着手したFliKやClpBでも機能発現機序の解明に迫るデータが得られている。②の技術開発では、細胞のように大きな系で起こる動的現象を捉える技術をほぼ確立させ、その有効性の実証研究も進み、複合機の開発も順調に進んでいる。また、高速nc-SPM(具体的には高速走査型イオン伝導顕微鏡)を実現させる要素技術の開発も順調に進んでいる。以上のように、本研究は全体としておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
タンパク質の機能動態イメージングについては、順調に進んでいる系の成果を論文にまとめる一方、難しいタンパク質ではアッセイ系の検討を継続する。新規の試料系についても探索する。生きた細胞などの大きな系で起こる動的現象を高速AFM観察できるまでに技術開発が進んだが、得られる情報が細胞表面に限られるため、また、柔らかい細胞表面上の分子を見ることも困難なため、細胞で起こる現象に深い洞察を与えることは難しい。細胞内で起こる現象との同時観察を可能にするには、蛍光顕微鏡との複合機が有効であり、その完成を目指す。この複合機では高速超解像蛍光顕微鏡という新たな可能性が出てきたため、その開発にも取り組む。柔らかい細胞やオルガネラ表面の高解像AFM観察は難しい課題であるので、これまでに進めてきた高速走査型イオン伝導顕微鏡を実現させ、その解像度を上げることにより生きた細胞やオルガネラで起こる分子レベル(少なくとも超分子複合体レベル)の動的現象を捉える方向で研究を進める。
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