研究課題/領域番号 |
24227009
|
研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
永田 和宏 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (50127114)
|
研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
|
キーワード | 小胞体 / カルシウム恒常性 / レドックス恒常性 / プロテオステイシス |
研究実績の概要 |
ERdj5によってSERCA2bの小胞体内腔側システインが還元され、SERCA2bのカルシウム取り込み活性が亢進することを明らかにした。当該年度は、そのカルシウム取り込み活性を、セミインタクト系を用いてより直接的に明らかにすることを目的に、新たなアッセイ系を確立し、ERdj5の存在によって、カルシウムイオンの小胞体へ取り込みが確かに活性化されていることを確認した。さらにERdj5自体がカルシウムイオン濃度によってそのオリゴマー形成の変化を通じて、SERCA2bの活性化能を変化させているという新事実を明らかにすることができた。小胞体内のカルシウムイオン濃度が低い状態ではERdj5がモノマーとして存在し、SERCA2bを活性化できるが、カルシウムイオン濃度が高くなるとオリゴマーを形成して、それ以上カルシウムの取り込みを行わないようにするという、きわめて合目的的なシステムを作っていることが明らかになった。 さらにSERCA2bの結晶構造解析のデータをもとに、小胞体内システイン残基が酸化状態と還元状態の二つの構造変化について解析した結果、還元状態では大きく構造変化を引き起こし、カルシウムイオンの取り込みに有利な条件を満たすことを確認した。 さらにERdj5には従来我々が報告してきたものとは違った、もう一つの構造があることを明らかにし、これら2つの構造がダイナミックに遷移しつつERdj5の機能制御が行われている可能性についてあきらかにすることができた。 さらに、ERdj5の還元活性の上流因子について明らかにすることを目的に、ERdj5の還元活性を主として担っている、4番目のチオレドキシンドメインに特異的に結合するタンパク質の探索を行った。その結果、小胞体に局在するオキシドレダクターゼの新たな電子伝達経路の存在を予見させるデータをえることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ERdj5によるSERCA2bの活性化自体が、小胞体内カルシウム濃度によって調節されていることを明らかにすることができた。これは当初計画には入っていない大きな進展であった。さらに、ERdj5に従来報告していたものとは別のもう一つの構造があることを明らかにし、その生理的意味を明らかにすべく実験を進めているところである。 さらにERdj5に還元力を与えている上流因子の探索を行い、ほぼその確定をできたと考えている。この電子伝達経路は、従来世界的に理解されている電子伝達の常識を覆すものであり、大きな発見になるものと考えられる。この基盤研究Sの期間中に論文としてまとめたいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
先にも記したように、ERdj5に還元力を与えている、従来の常識を覆す電子伝達経路の確定を急ぎ、本基盤研究Sの研究期間内に論文として仕上げるべく努力をする。
|