研究課題/領域番号 |
24228001
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西山 真 東京大学, 生物生産工学研究センター, 教授 (00208240)
|
研究分担者 |
富田 武郎 東京大学, 生物生産工学研究センター, 助教 (50447364)
|
研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
|
キーワード | キャリアタンパク質 / リジン生合成 / アルギニン生合成 / 好熱菌 / 進化 / アミノ酸生合成 / 放線菌 / 二次代謝生合成 |
研究概要 |
Sulfolobus acidocaldariusとは系統が異なるアーキアであるThermococcus kodakarensisではリジン生合成に関わるすべての酵素がアルギニン生合成をも担っている可能性がゲノム情報から考えられた。そこで、各酵素を単離、精製したところ、それらは予想通りにAAAを用いたときにはリジンを、グルタミン酸を用いたときにはオルニチン(アルギニンの生合成中間体)を生成することが明らかとなった。T. kodakarensisのLysX(ArgX)の結晶構造を決定し、SulfolobusのArgXやT. thermophilusのLysXとのアミノ酸配列、および結晶構造との違いから、この酵素ファミリーの基質特異性決定残基を明らかにした。 我々はStreptomyces sp. SANK 60404にみいだされたLysWホモログがどのような化合物の生合成に関わるかを明らかにする研究も行っている。前年度までの研究で、まずLysWホモログにグルタミン酸が結合すること明らかにした。その後、LysWが付加したグルタミン酸の側鎖は修飾を受け、新たなアミノ酸誘導体が生成し、それが非リボソーム型ペプチド合成酵素に認識されて他のアミノ酸と結合し、ペプチドが合成されると推測している。本年度はこのアミノ酸誘導体の単離同定を行い、それが新規アミノ酸(2S,6S)-ジアミノ-(5R,7)-ジヒドロキシヘプタン酸(DADH)であると同定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
T. kodakarensisではリジン生合成に関わるすべての酵素がアルギニン生合成をも担う多機能酵素であることが明らかとなるとともに、そのうちの1つLysX(ArgX)の結晶構造を決定し、SulfolobusのArgXやT. thermophilusのLysXとのアミノ酸配列、および結晶構造との違いから、この酵素ファミリーの基質特異性決定残基を明らかにした。現在論文化を行っている。 また、放線菌のLysWホモログが関わる二次代謝については、LysXホモログによってLysWにグルタミン酸が付加していることが確かめられたが、LYsWを介して生合成され、最終的にLysWから切り離される化合物の最終構造についてはわかっていなかった。そこで、切り離しに関わると予想されるLysKホモログの破壊株を用いた手法で解析を行い、付加された化合物のマスを検出することに成功した。ついで、大腸菌を用いてその化合物の生産を試み、その化合物が新規アミノ酸(2S,6S)-ジアミノ-(5R,7)-ジヒドロキシヘプタン酸(DADH)であると同定した。本成果は新規のアミノ酸を発見しただけでなく、それが幅広い二次代謝産物に組み込まれて生物活性を示す鍵となる可能性を示唆しており、大きな成果と考えている。これについても論文化を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度に、S. acidocaldariusについてドイツマックスプランク研究所にて遺伝子操作の手法を習得したが、不思議なことに同様に実験を行っても申請者の研究室ではその操作に成功できないことから、操作法を微調整し、解決していく。T. kodakarensisでは現在遺伝子操作系、遺伝子破壊系の技術を習得中である。これらを活用してキャリアタンパク質を介するアミノ酸生合成系の全貌を明らかにしていく。また、これらのリジン・アルギニン生合成系を構成し、キャリアタンパク質LysWと相互作用する酵素のうち、LysX(ArgX)、LysZについての複合体結晶構造が得られている。その他、LysY、LysJ、LysKについてもLysW複合体の構造の決定を試みていきたい。 放線菌に関しては、異種発現系を用いることで、lysWが関わる二次代謝生合成経路の最終産物の構造決定を行うとともに、DADHも含めて、それらの生物活性を検討していく。また、LysWを用いるとはいえ、二次代謝生合成にはリジンやアルギニン生合成に含まれない新たな酵素が関与することがわかっている。これらについても結晶構造の決定を行うなどして生合成機構を解明していきたい。
|