研究課題/領域番号 |
24228002
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研究種目 |
基盤研究(S)
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
河野 憲二 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (50142005)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | ストレス / 小胞体 / 寄生虫 / 糖尿病 / ノックアウトマウス |
研究概要 |
(1)小胞体膜上での特殊スプライシング機構の解析 XBP1u蛋白質のHR2領域は、小胞体膜移行シグナル活性を持っている(Yanagitani, et al., Mol. Cell 2009)。XBP1u蛋白質をウサギ網状赤血球抽出液で合成し、そこに蛋白質分解酵素で処理したミクロソーム(PK-microsome)を加えると、膜への移行が見られなくなった。このことは膜上にHR2受容体があることを示唆している。そこで、HR2領域に結合する蛋白質を単離する目的で、Flag-His-XBP1uをHeLa細胞で発現し、その細胞抽出液からFlag-His-XBP1u結合蛋白質を集め、現在質量分析による解析を行っている。 (2)寄生虫の排除に関与するIRE1β の生理機能解析 野生型マウスとIRE1βKOマウスにIL-33を投与し、その時の小腸のPAS染色、抗ムチン抗体による染色を行った。IL-33投与により野生型では杯細胞の数が増え、細胞全体が肥大化して、ムチンを大量に蓄積していた。一方IRE1βKOマウスの小腸ではこれら両者の増大は顕著に抑えられていた。またIRE1βKOマウスでは電気泳動の結果ムチン前駆体と思われるバンドが観察された。 (3)糖尿病発症におけるIRE1α/ATF6の生理機能解析 遺伝子型IRE1α(fl/-)/CreとIRE1α(fl/+)/Creのマウスについて、血糖値とグルコース負荷テスト(GTT)、及び負荷テスト時の血中インスリン濃度を経時的に測定した。IRE1α(fl/-)/Creマウスは生後16週目から血糖値が上昇し糖尿病症状を示した。生後20週ではIRE1αが KOされた状態ではグルコース応答性が悪化し、血中インスリンも糖負荷に反応せず上昇しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)のHR2受容体に関しては、質量分析の結果いくつかの候補分子があがってきており、順調に進んでいる。(2)に関しては、野生型マウスでIL-33投与後の小腸杯細胞の成熟が進むことが、他の報告と同様に確認できた。また杯細胞の数が増えるという予想外の成果も得られている。IRE1βKOマウスでは、これらの効果がいずれも抑制されていたので、予定通りに進んでいる。(3)に関しては、各種系統のKOマウス作製に多くの時間をさかれているが、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)HR2結合蛋白質について質量分析から得られた候補分子に関してその妥当性を追求する実験を進める。翻訳休止を起こす領域(CTR)に関しては、この領域を他の蛋白質に付加したときの効果を調べ、細胞機能解析への応用を考えている。(2)マウス個体に線虫感染をし、杯細胞への影響をIL-33投与の場合と比較する。またIRE1βKOマウスでは、排虫にどのような影響が出るかを調べる。(3)IRE1αとATF6αのダブルKOマウスは、生後6-8週で非常に早く糖尿病を起こす可能性がでてきたので、その確認を行う。IT6とIRE1αCKO (conditional KO)マウスとをかけあわせ、そのマウスから腫瘍化β細胞を樹立し、培養細胞レベルでのCre組換え酵素を用いた遺伝子欠損を試み、インスリン産生への影響を調べる。
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