研究課題
本研究課題は、胆管系の発生・形態形成過程でのSOX17陽性の胆管細胞の動態・機能を明らかにすることにより、胆管系の構築の分子機序とその形成異常による先天性疾患の分子基盤の解明を目的としている。本年度は、下記の成果を得た。1)胎齢8.5日(E8.5)の胎子の全胚培養によるfate mapping解析により、9-11somite胎子の前腸での胆嚢原基の予定領域を検討した結果、左右の前腸の腹側・最外側領域の前方から1-2体節の腹側前腸の位置が胆嚢原基の腹側面を形成することを明らかにした。また、前腸門の中央部において背側壁を形成する胆管前駆細胞を同定し、胆嚢原基は3種類の前腸内胚葉から由来することが明確となった。2) E8.5-9.0における前腸全載培養法と全胚培養法を用いて、Sox17-EGFPノックイン系統の胆管前駆細胞の動態を解析した。Sox17-EGFPホモ胚からの培養片では、胆嚢原基となるEGFP陽性の内胚葉細胞は、誘導された肝芽、膵芽領域まで幅広く分布し、同細胞は、肝芽、膵芽マーカー陽性を示した。本結果から、胆管前駆細胞は、Sox17活性の消失により肝芽様細胞等に脱分化することが示唆された。3)胆嚢原基のトランスクリプトーム解析により、Sox17の下流で機能する複数のシグナル因子を同定した。そのうちの一部のシグナル因子が、SOX17+胆管前駆細胞で強く発現し、その受容体遺伝子は、胆嚢周囲の間質領域に発現していることが判明した。Sox17 +/-とこれらのシグナル因子欠損マウスとの交配実験により、このシグナル低下がSox17 +/-の胆嚢原基の低形成に関与し、胆道閉鎖を重篤化することを見出した。今後,Sox17の上流下流のこれらのシグナル経路に着目して機能解析を行い、胆管上皮の破綻の原因、胆嚢炎,胆管炎,胆道閉鎖に至る病態メカニズムの全貌が解明できるものと期待される。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、おおむね進んでいる。大きな目標である胆嚢前駆細胞でのSox17の下流のシグナルカスケードの同定に成功し、このシグナル因子欠損マウスでの胆嚢形成の解析も順調に進行している。
Sox17の上流,下流因子の機能解析として、器官培養下での候補シグナル因子を染み込ませたビーズによる添加実験により、SOX17+胆管前駆細胞の動態解析を行う。さらに、他のconditional Sox17変異系統であるShiva系統、Alb-cre、Pdx1-creと Sox17 flox/-、Sox17 flox/floxの二重変異体での胆嚢での表現型解析を行う。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
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