研究課題
これまでのハイスループット化合物スクリーニングにおいて、植物の免疫を阻害する類似化合物を同定し、この化合物がサリチル酸のシグナルを拮抗阻害すること、さらにサリチル酸と構造的に類似していることから、この化合物の結合タンパク質を同定していた。本年度は免疫阻害剤結合タンパク質の植物内大量生成および精製法を確立し、その高純度精製に成功した。タンパク質は6量体を形成しており、N末、C末ともタグの付与によって6量体の形成が阻害されることが分かった。このタンパク質がマンガンに結合すること、またこのタンパク質は糖鎖が結合されており、大腸菌、酵母、動物細胞の系では6量体が形成できないことも分かった。シロイヌナズナで同定された免疫阻害剤耐性株の変異アミノ酸を導入すると免疫阻害剤と結合できなくなることからも、この表現型が説明できた。このタンパク質を10mg以上精製し、結晶化スクリーニングを行って、結晶化に成功した。結晶解析の結果、6量体の構造を決定できた。その構造からマンガンの周りに特異的なポケットがあること、変異に関与するアミノ酸がそのポケットの近くにあることなどから、このポケットがタンパク質の機能に重要であろうと推定された。また2量体構造が植物ホルモンであるオーキシンの結合タンパク質で細胞外受容体と考えられるABP1(Auxin Binding Protein 1)と類似していることが明らかになった。さらにベンサミアーナタバコから3つのホモログを同定し、それぞれをVirus Induced Gene Silencingシステムを用いてノックダウンすると、病原細菌であるPseudomonas syringae pv. tabaciに対して免疫が抑制されていることが分かった。このことにより、免疫阻害剤結合タンパク質が植物免疫に重要な役割をしていることが明らかになった。またその他の植物免疫に関与するタンパク質の制御機構が明らかになった。
1: 当初の計画以上に進展している
タグ等のシステムが機能せず大量精製が難しく、純度の高さが必要となる結晶解析はあまり期待できなかったが、これを克服し、結晶構造解析に成功した。これにより構造相関解析が可能となり、大きなブレイクスルーとなった。また植物が病原細菌の鞭毛を認識する際、病害応答転写因子として知られるERF4遺伝子を転写したmRNAが代替ポリアデニル化を受け、代替スプライシングを起こすことを突き止めた。さらに、これによってERF4タンパク質のEARモチーフと呼ばれる転写抑制領域が欠失し、病害応答遺伝子群が発現することが分かった。また、この代替ポリアデニル化が開花期の調節に関わるFPAタンパク質によって制御されることも分かった。また同じく鞭毛を認識する際、免疫センサーは「BIK1」という因子を介してRBOHDをリン酸化し活性化させ、活性酸素を生成する防御応答を誘導すること、さらに、BIK1を介してRBOHDにより生成された活性酸素は、毒性因子として直接病原菌を攻撃するだけでなく、情報を伝達する因子として働き、病原菌の主な侵入経路である気孔を閉じて病原菌の侵入を防ぐことが分かったことは、計画以上の発見であり、大きな成果だといえる。
免疫阻害剤結合タンパク質の生化学的機能を中心に研究を展開する。また植物免疫に関与する遺伝子の新規同定、ゲノム解析、ケミカルスクリーニングなども積極的に推進していく。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
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