研究課題
基盤研究(S)
1.脂質解析技術の開発東京大学大学院医学系研究科のリピドミクス社会連携講座で島津製作所と共同研究を進め、当初の目的通り、100種類を越えるエイコサノイドを30分程度で一斉分析、定量出来る手法を確立した。現在、組織実サンプルなどを用いて定量、プロファイリングを開始している。また、リン脂質、リゾリン脂質のプロファイリング法の開発も進めている。2.リン脂質代謝酵素の研究ホスホリパーゼA2β欠損マウスが免疫増強作用を示すことを明らかにした。また、ホスホリパーゼA2εの神経細胞分化への役割を明らかにした。今後、分子機構を明らかにし、公表予定である。アシル転位酵素ではPAF生合成に関与するLPCAT2阻害剤のスクリーニングを行い、他の酵素を阻害せず、また、酵素の持つ二重活性(PAF産生と膜リン脂質産生)の内、炎症作用を持つPAF産生のみを抑える化合物を得た。現在、製薬企業との共同研究を進めると同時に、研究室での試薬としても有用性を確かめている。肺サーファクタント脂質輸送タンパクの探索の過程で、リン脂質の曲率やパッキング異常を認識し、結合する新たなタンパクを得た。この生体内での役割を解析中である。新規のアシル転位酵素を見つけ、超長鎖脂肪酸やDHAなどの膜への取り込みのメカニズムとその生理的意義の解明を進めている。3.リン脂質ダイナミズムの生物学的解析脂肪細胞の分化と共に増加するアシル転位酵素を見出し、本酵素によると思われる脂肪細胞リン脂質膜の組成の変化をLC-MSで確認した。脳ではホスホリパーゼA2に代わる別の酵素がアラキドン酸遊離に係わることをノックアウトマウスを用いて明らかにした。アシル転位酵素の欠損マウスは順調に樹立されている。
2: おおむね順調に進展している
東京大学から国立国際医療研究センターへ研究室が移動し、マウスの繁殖が数ヶ月ストップしたことで、個体レベルでの解析が予定より遅れている。また、当初予定していた肺サーファクタント輸送タンパクについては、予想外の機能(パッキング異常の認識)が見つかったため、再検討が必要となっている。これ以外の研究は計画通り、順調に進んでいる。
1.脂質解析技術に関しては、今回開発した手法をさらに改善し、最適化すると共に、様々な実サンプルの測定を進める。また、膜リン脂質のプロファイリング技術の改良を進める。2.リン脂質代謝酵素では、移動後のマウスの本格稼働が開始する(6月末)ので、初期の予定通り、解析を進め、また、質量分析型を用いた手法で、DHAや超長鎖脂肪酸を含む、膜リン脂質の機能を神経細胞や網膜を用いて行う。3.東大のリピドミクス社会連携講座と国立国際医療研究センターの連携を強め、患者サンプルの解析に進む。4.既に確立した技術の商業化、またLPCAT2阻害剤の開発について、企業との共同研究を一層進める。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件)
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