研究概要 |
1. T細胞抗原受容体複合体の構造解析:TCR-CD3複合体の構造解析のために、複合体の全ての分子(TCRα, β, CD3γ, δ, ε, ζ)の膜領域を含むリコンビナント蛋白を無細胞合成系で作製することに成功した。各ダイマー(TCRαβ, CD3γε, δε, ζζ)の形成、大量調整へと発展させる。 2. TCRミクロクラスター(MC)の活性化シグナル:低濃度の抗原刺激ではcSMACが形成されず、更に低濃度(10nM以下)では、TCR-MCも検出できなくなる。この条件下でも、TCRを含まない LFA-1に依存したSLP76のクラスターが形成され、弱いTCR活性化シグナルを接着シグナルが補強する機能が考えられる。 3. 副刺激によるT細胞活性化制御:CD28はcSMACの領域「活性化cSMAC」に集積しPKCθ, CARMA1をリクルートして副刺激を誘導する。抑制性副刺激受容体PD-1のダイナミック制御を解析した。PD-1は活性化に伴ってTCR-MCに局在した後、活性化cSMACに集積した。PD-1 MCはSHP2をリクルートし、TCR活性化上流分子 シグナルを脱リン酸化して活性化抑制する。PD-1の細胞外領域の長さを変化させた変異体の解析から、PD-1が同一TCR-MCに存在することが活性化抑制に不可欠であることが分かった。抗原ペプチドを頻回免疫してPD-1+CD8+T細胞を誘導しin vivoでの抑制機構を調べた。このPD-1+T細胞はアナジー状態で、PD-1がミクロクラスターに共存して活性化抑制をするが、抗PD-L1抗体でPD-1/PD-L1の結合を阻害すると、PD-1はTCR-MCと局在できず、T細胞の抑制は解かれた。これからも、PD-1がTCR-MCに共局在することが活性化抑制に必須であることが明らかになった。
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