研究課題
1.TCRミクロクラスターの活性化シグナル制御:①Ras活性化を主に制御するGEF、RasGRP1はTCR刺激にともなってER様なメッシュ構造に集積され、Rasの存在する細胞膜と接して、Ras活性化を誘導すると考えられた。RasGRP1のこの局在に必要なC末部位を同定し、この部位に結合する分子として、細胞骨格制御を司るPlectinを同定した。RasGRP1は活性化に伴い、Plectinとの会合を介してER様メッシュ構造をとり、Ras活性化を担うと考えられた。②In vivoにおける初期T細胞活性化の解析のため、生体内にCa2+インジケーターを導入したT細胞と樹状細胞を移入し、リンパ節に移動する初期からの動態を観察した。血管からリンパ節に入る際にCa2+上昇が観察され、リンパ節に移動してから樹状細胞と接着すると更に強くCa2+シグナルの上昇が誘導され、初期の弱い上昇がDCによる強い活性化に必要であることを示唆した。2.他のシグナルによるT細胞活性化制御:①活性化初期にTCRミクロクラスターが形成されると同時にこれを取り囲む接着分子のリングが形成されることが発見した。接着リングは活性化初期のみ形成され、LFA1とFocal adhesion分子Paxillin, Pyk2などで構成される。弱い刺激ではcSMACは形成されないが、接着リングは形成されることから、生体内でのT細胞活性化を誘導するAPCとの接着を担うと思われる。②T細胞が自己認識によってセミ活性化状態となり、このシグナルが欠如すると機能低下が誘導される。この活性化シグナルをex vivoのT細胞で解析し、種々の活性化分子のリン酸化が誘導され、NFAT活性化が顕著に見られた。Chip解析から、このシグナルにより特にEgrファミリー分子などが誘導され、抗原活性化後のIL-2産生の増強をもたらしていると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
TCRミクロクラスターを介する活性化シグナルについて、下流の各シグナル経路の解析およびin vivoでの活性化の実態の解析が順調に進められている。また活性化シグナル形成に、TCRミクロクラスターを取り巻く接着分子リングが必要なことを見出し、生体内で機能するシナプスの実態を発見した。これまで解析困難だった自己認識シグナルの実態を明らかにできた。
TCRミクロクラスターを介する活性化シグナルの制御を解析する。一方では引き続きRas活性化などの下流の各シグナル経路の時空間制御を解析するとともに、他方これまで解析されていない抑制性のシグナル制御 ― 特にCblなどユビキチン制御による抑制系とPTPN22などの脱リン酸化酵素による制御 ― などを解析する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
Arterioscl. Throm. Vasc Biol.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1161/ATVBAHA.115.306848.
J Exp Med
巻: 213 ページ: 123-138
10.1084/jem.20150519.
Journal of Experimental Medicine
Front. Immunol.
Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol.
巻: 35 ページ: 1423-1433
10.1161/ATVBAHA.114.304846.
http://www.riken.jp/pr/press/2015/20151221_1/