研究課題/領域番号 |
24229006
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研究種目 |
基盤研究(S)
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
山村 隆 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所免疫研究部, 部長 (90231670)
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研究分担者 |
三宅 幸子 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所免疫研究部, 室長 (50266045)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2016-03-31
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キーワード | 多発性硬化症 / 腸内細菌叢 / メタジェノム解析 |
研究概要 |
我々は以前より多発性硬化症(multiple sclerosis; MS)の我が国における増加傾向の背景に、食生活の欧米化による腸内細菌叢の変調が存在する可能性を提唱して来た。この仮説を持つにあたった背景には、MSの動物モデルが抗生物質投与によって改善することや、特定の腸内細菌によって病態が修飾されることなどの実験的事実が存在する。今回の研究は、ヒトでこの作業仮説の妥当性を検証することを目的とし、さらに腸管免疫を標的とする画期的な治療法を開発することを目指している。日本人MS患者および健常者の糞便サンプルを収集し、16S遺伝子配列解析およびメタジェノム解析によって、腸内細菌叢を網羅的に解析した。その結果、炎症性腸疾患において異常な減少が報告されているFaecalibacterium 菌の一種が、MS患者においても、減少していることが明らかになった。MSと炎症性腸疾患は、ともに日本国内で過去30年間にわたって、顕著な増加傾向を示す疾患であるが、共通の遺伝的な背景を有することも示唆されている。今回の我々の研究成果は、特定の腸内細菌と免疫性神経疾患との密接なつながりを、ヒトではじめて証明したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多発性硬化症患者の糞便中の特定細菌の減少を明らかにできた。このように作業仮説の妥当性を支持する決定的な証拠が得られたことから、おおむね順調に進展していると考えている。また、腸内細菌依存性免疫細胞の研究についても、新たな情報が得られており、論文発表の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
日本人多発性硬化症患者で明らかになった腸内細菌叢異常の重要性を確固としたものにするため、疾患特異性の確認、治療薬や病期の影響の除外、欧米人患者との比較研究などを進める。また腸内細菌叢異常と多発性硬化症発症の因果関係を明らかにするために、抗生物質投与で変化する制御性細胞の同定、多発性硬化症で減少している細菌をgerm-freeマウスに生着させて免疫系の変化を調べる研究等を展開する。
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