研究課題
多発性硬化症(MS)は代表的な中枢神経系自己免疫疾患である。我が国の患者数は過去40年で30-40倍に増加しており、背景に存在する環境(後天)要因の解明が急務である。我々はMSの発症に腸内細菌叢(gut microbiota)の偏倚が関与する可能性を提唱し、本年度は患者糞便試料で、酪酸発酵に関与しうるクロストリジウム細菌(Cluseter IVとXIVa)の減少が見られることを報告した(Miyake et al. PLOS ONE 2015)。特定のクロストリジウム細菌の減少とMSの発症を結びつけるメカニズムとして、腸粘膜に存在する制御性リンパ球の変調が推測される。我々は研究の総仕上げとして、マウスの腸管上皮に、腸内細菌叢に依存性で、かつAHRリガンドに反応するCD4+の制御性T細胞(regulatory intraepithelial lymphocytes: regulatory IEL)が存在することを明らかにした。同細胞はTh17細胞に類似した特徴を有するが、中枢神経炎症の場に浸潤してLAG3を高発現して、LAG3依存性にMSの動物モデル実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を抑制することがわかった(Kadowaki, Yamamuraら. Nature Comm 印刷中)。食生活の欧米化などによる腸内細菌叢の偏倚が生じ、それがregulatory IELのような腸内細菌依存性制御性細胞の変調を導くことによって、MS発症の閾値が低下し、ひいては患者数の増加につながっている可能性がある。現在ヒトregulatory IELの研究も進め、新たなMS治療・予防の戦略につながる情報を収集している。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Neurol: Neuroimmun & Neuroinflamm
巻: 3 ページ: e210
10.1212/NXI.0000000000000210
Nature Communications
巻: 未定 ページ: 未定
Neurology
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10.1212/WNL.0000000000001767
PLOS ONE
巻: 10 ページ: e0137429
10.137/journal.pone.0137429
巻: 6 ページ: 8437
10.1038/ncomms9437