研究課題/領域番号 |
24229008
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
畑澤 順 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70198745)
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研究分担者 |
下瀬川 恵久 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30370258)
加藤 弘樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20448054)
金井 泰和 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60397643)
渡部 直史 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90648932)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | マイクロドーズ / PET / ドネペジル / アセチルコリンエステラーゼ |
研究実績の概要 |
本研究にて整備した小動物用PET/CT装置を用い、アルツハイマー病治療薬のPET標識薬剤(11C- Donepezil)の全身動態をラットおよび健常成人についてPET撮像を行い、種差を定量的に評価した。ヒトでは心筋に高集積を認めたが、ラットでは低集積であること、ラットでは副腎に高集積を認めたがヒトでは集積が低いことを明らかにし、標的外臓器集積の種差を明らかにした(PETマイクロドーズ臨床試験が必要であることの証明)。 ラットの全身主要臓器においてDonepezilのターゲットであるアセチルコリンエステラーゼ濃度を計測し、11C-Donepezilの全身分布と比較した。各臓器のアセチルコリンエステラーゼ濃度に対する集積の比率を求めたところ、肝、腎などの薬剤排泄臓器、膵臓、副腎、唾液腺などの腺組織において、11C-Donepezilはアセチルコリンエステラーゼ濃度に対して相対的に高集積を認めることが明らかになった(医薬品の標的組織、標的外組織への送達性を測定)。 健常人を対象とした11C-DonepezilのPETマイクロドーズ臨床試験を実施し、マイクロドーズ(100μg以下)および薬理量を内服後の脳内分布ならびに全身分布の評価を行った。内服投与後の薬剤の血中濃度を計測し、内服量と血中濃度が正比例すること、マイクロドーズと薬理量で内服投与後の薬物動態に差がないこと、を明らかにした。薬理量投与時の薬物動態を、マイクロドーズの内服で推定できることを初めて立証した(PETマイクロドーズ臨床試験の方法論的妥当性の証明)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アルツハイマー病治療薬アセチルコリンエステラーゼ阻害剤C-11 Donepezil、およびホウ素中性子捕捉療法のホウ素担体boronophenylalanineの体内動態をラットおよび健常成人でPETを用いて画像化し、これらの薬剤の体内分布には種差があることを明らかにし、本研究課題のテーマである”マイクロドーズ臨床試験の必要性についての科学的根拠”を証明した。これらの医薬品として現在安全にかつ有効に用いられている医薬品は、標的臓器への集積性、代謝排泄経路には種差が小さく、非集積臓器への集積に種差があるという共通の特徴があった。多数の創薬候補化合物の中から開発の優先順位を決める際の手がかりとなる情報が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
塩酸ドネペジル、BPA (boronophenylalanie)のヒトでの標的臓器への集積は、動物実験から推定される量とほぼ同等(2~3%)であった。全身からの排泄についても、動物実験から推定される経路、排泄時間と同等であった。一方、標的外臓器への集積には両薬剤とも種差が認められた。小動物とPETマイクロドーズ試験のデータを比較した場合、標的臓器・組織への送達性、排泄の類似性が高い化合物が医薬品として利用されている。今後さらに多数の医薬品(抗がん剤など)について検討する。 本研究ではPETによる医薬品の標的臓器への送達性を検証しているが、さらに標的分子(塩酸ドネペジルであればコリンエステラーゼ)の組織内濃度をPETで測定することできる。今後、ヒトにおいて医薬品の組織送達性と組織内標的分子濃度を検証し、創薬候補化合物の医薬品としての適性を考慮する際の判断基準となりうるかを検討する。
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備考 |
大阪大学における前臨床PET研究施設について
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