研究課題/領域番号 |
24229009
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
平田 雅人 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (60136471)
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研究分担者 |
松田 美穂 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40291520)
竹内 弘 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (70304813)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | オステオカルシン / インクレチン / インスリン / エネルギー代謝 / 脂肪細胞 / 細胞シグナリング |
研究概要 |
本年度の成果はマウス個体に対してGluOCが経口投与でも有効に作用することを明らかにした事である。このことはGluOCの治療的な応用に加えて、予防的な応用を考えた時にはその意義は大きい。 マウス(6週齢)に対してGluOC(3 ng/g 体重)を週に3回、10週間にわたって経口投与したところ、メスで空腹時血糖の低下、膵臓ラ氏島の面積の増加に伴うインスリン分泌量増加、耐糖能の改善、小型脂肪細胞の増加などが観察された。しかし、体重、骨の状態、インスリン抵抗性に変化はなかった。 経口投与されたGluOCの消化管内での動態も明らかにした。GluOCの大部分は胃液や腸液のタンパク質分解酵素によって消化されるが、わずかな量が24時間以内で消化管内腔に残留することが分かったが、48時間経過すると検出限界以下にまで下がった。しかし、毎日投与すると一定量を消化管内腔に維持する事を確認した。また、血中GluOC濃度もそれに応じて高値を維持した。これらのGluOCに応じて門脈内GLP-1濃度も上昇することが分かった。 小腸組織切片の免疫染色により、GluOCの受容体であるGprc6aが小腸内腔の細胞にapical側のみならずbasolateral側にも存在することを確認した。そのうちのいくつかはGLP-1と共局在していることも明らかにした。つまり、GluOCは全身の血流及び消化管内腔側の両方から作用し、GLP-1の分泌を促し得ることが示唆された。 前駆脂肪細胞株3T3-L1を脂肪細胞に分化させ、GluOCを添加するとPPARγの発現が亢進し、アディポネクチンの分泌が促進されることを明らかにした。Gprc6aをノックダウンした細胞、MEK及びPKAの阻害剤などを用いた実験でGluOCはGprc6aを介してPKA、MEK を活性化し、アディポネクチンの発現を促進させていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスにGluOCを長期間経口投与したところ、エネルギー代謝に改善が見られた。また、その効果には雌雄差があることも明らかになった。関連する種々の実験によりGluOCによる内分泌作用のターゲットとなる臓器がしぼられつつある。GluOCが経口投与で有効であることを示せたため、臨床(一般)応用への可能性が広がった。以上のことから、当研究は計画どおり概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
GLP-1受容体ノックアウトマウスを用いてGluOCの効果を検討し、GluOCの内分泌作用におけるインクレチンの関与について更に解析を進める。小腸特異的あるいは脂肪組織特異的にGprc6aを欠失したマウスを作成して全身的な表現型を観察・解析する。これらの実験によりGluOCによる全身の代謝活性化作用における小腸(インクレチン分泌)や脂肪組織への役割を解明する。しかしながら、実験に際し、大量のGluOCが必要となるが、その大量合成は困難である。そこでOCが骨基質中に多く存在することを踏まえて粉砕骨からGluOC が調製出来るか、また調製したGluOCが、これまで用いてきた組換えGluOCと同様に培養細胞やマウスに対して作用するかどうかを確認する。
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