研究課題
本年度は以下の点を明らかにした。1. GluOCの長期間投与による抗メタボリックシンドローム効果はGLP-1を介する割合が高い。2. GluOCには血管内皮細胞保護作用がある。3. 骨より抽出したOCも有効である。4.PRIPはインスリンシグナルを抑制する。具体的には、1. 雌性マウスに4週間にわたって毎日GluOC (体重1gあたり10ng)を経口投与したところ耐糖能の改善が認められたが、GLP-1受容体アンタゴニストであるExendin(9-39)を同時に投与するとその効果は消失した。また、GLP-1受容体遺伝子欠損マウスにGluOCを投与したところ、代謝改善効果は認められなかった。2.マウスにGluOCを腹腔内投与すると、その直後の血中 NO (nitric oxide) 濃度が上昇した。また、動脈硬化誘発モデルマウスにGluOCを週5回、4週間にわたって腹腔内投与すると大動脈内膜の肥厚、血中総コレステロール値および LDL 値が抑制された。正常大動脈血管内皮細胞株にGluOCを添加するとeNOS (endothelial nitric oxide synthase) の発現上昇と培養上清中NO の上昇が認められたことから、その効果は血管内皮細胞におけるNO産生を介することが示唆された。3.アルカリ性の溶媒を用いて廃棄豚骨からOCが抽出されることを確認した。このOCをマウスに長期間経口投与し、糖代謝に関する指標を解析したところ、組換えGluOCと同様に有効であるという結果を得た。大量生産が可能になることから意義は大きい。4.PRIP遺伝子欠損マウス由来脂肪細胞ではインスリン刺激によるIRS-1のセリンリン酸化が亢進しており、それによってインスリンシグナルが抑制されていることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
GLP-1 受容体のノックアウトマウスに対するGluOC の継続投与の効果が、野生型とは異なる事を見いだしており、GluOC の効果は GLP-1 を介した事象である事を明確に、かつ直接的に示す事ができている。最後の詰めの実験研究を行っている。GluOC を用いた研究を継続してきて、常に確実な影響を観察出来るのが脂肪細胞への影響であった。そこで、脂肪細胞特異的な GluOC 受容体であるGPRC6A のノックアウトマウスを作製する計画を立てた。いくつかの困難に遭遇したため予定より遅れたが、ようやく完成したので解析を開始した。また、廃棄豚骨からの OC の抽出とその作用に関する研究は、廃棄豚骨の有効利用という福岡という地域性を生かした事業展開が可能であり、地域創成という国策にも合致しているということで、種々の展開を計画している。以上のことから、本研究は計画通りにおおむね順調に進展している。
1. 妊娠マウスを 4 群に分け、正常食 (ND) あるいは高脂肪高ショ糖食 (HFD) で飼育しながらGluOCを長期間にわたって経口投与し、それらの子どものメタボ状態への影響に関する検討を行う。仔マウスを、母体の素性に加えて雌雄差とともに ND 群と HFD 群に分けて、合わせて 8 群の仔マウスの経時的体重変化、血清中性脂肪およびコレステロール値、膵臓・脂肪・肝臓等の組織学的解析、炎症性サイトカインの発現量の解析を、雌雄を区別して行う。2. GLP-1受容体欠損マウスのGluOCに対する応答を評価する。既にいくつかの事象でGluOCの効果が野生型とは異なることを見いだしており、GluOCの代謝改善効果がGLP-1を介したものであることを明らかにできると考えている。また、GLP-1受容体欠損マウスの妊娠母体でも上記1.同様にGluOC投与実験を行い、世代を越えたGluOCによるメタボ改善もGLP-1を介したものかどうか明らかにする。3. 脂肪組織特異的GPRC6A欠損マウスの表現型解析、高脂肪高ショ糖食飼育による影響の評価を行うと同時に、これまで野生型マウスで行ってきたGluOC継続投与実験を開始する。4. GluOCには前立腺癌細胞とメラノーマに対する抗癌作用があることを示唆するデータを得ている一方、GlaOC には促進的な作用があることが分かってきた。そこで、細胞の感受性の相違が何によるものか、GluOCとGlaOCの受容体は同一であるのか等、主に“感受性”に焦点を当てた解析を行う。また、in vivoでのGluOCの抗がん効果の解析も行う。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 謝辞記載あり 9件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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