研究課題/領域番号 |
24240006
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
合田 憲人 国立情報学研究所, アーキテクチャ科学研究系, 教授 (80247212)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2016-03-31
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キーワード | ハイパフォーマンス・コンピューティング / クラウドコンピューティング |
研究実績の概要 |
平成26年度は、平成25年度に検討した学術連携クラウドのユースケースに関する検討結果をもとにして、以下の二つのユースケースにおける負荷分散技術に関する研究を進めた。 アプリケーションの特性に応じて最適なクラウド基盤上の計算資源群を選択するためには、クラウド基盤のユーザが実行するアプリケーションの特性を明らかにする必要がある。そのため、本研究では、Googleが公開する自社データセンター上のアプリケーション実行履歴を分析した。具体的には、Googleのデータセンター上で実行された約12,500件のアプリケーション実行履歴を分析し、ユーザ毎のアプリケーションの構成(ジョブ、タスク)、資源利用量(CPU、メモリ)、利用形態(利用時間、セッション時間、セッション間隔、頻度)に関する特性を明らかにした。その結果、Googleデータセンター上のユーザの利用形態にMice and Elephants Phenomenon(ごく一部のユーザがほとんどの資源を利用している状態)が観測されること等が明らかになった。 次に本研究では、ハイブリッドクラウド上でローカル環境の計算資源に障害や急激な負荷が発生した場合に、クラウド基盤の計算資源を追加利用するために、ハイブリッドクラウド上でアプリケーション特性に応じた最適な計算資源構成を決定するための性能モデルを提案した。国内外のクラウド基盤から構成される実験環境上での提案モデルの性能検証を行った結果、一定の特性を持つアプリケーションおよびクラウド基盤では、ハイブリッドクラウド上で実行時間を最小にする計算資源構成を予測できること、性能モデルについてはShuffle Phaseに発生する通信時間を精度よく予測することが重要であること等が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クラウドのユーザが実行するアプリケーションの特性の分析については、まずアプリケーション(ジョブ)毎の特性を明らかにすることを目的として分析を進めた。その後の研究の進展により、ユーザ毎の特性を明らかにすることがより重要であることが分かり、後者の分析を重点的に進めることとした。この結果、「研究実績の概要」で述べた知見を得ることができた。研究代表者らが知る限り、Googleデータセンター上のアプリケーション実行履歴に関するユーザ毎の特性を明らかにした報告は本研究が最初である。 ハイブリッドクラウド上での性能モデルに関する研究については、本研究の連携協力者の他、ハワイ大学Casanova教授、国立情報学研究所政谷研究員らともモデルに関する検討を行い、性能モデルを考案した。また、国内外のクラウド基盤からなる実験環境を構築し、性能モデルの精度検証および改良を進めた。 以上の結果、ほぼ当初計画通りに研究を進めることができた。ただし、実行履歴分析および性能モデル検証を重点的に行うように研究計画の一部を変更したため、当初計画のうち負荷分散アルゴリズムの検討については次年度以降も継続して実施することとした。これらの研究成果は、論文として発表するとともに、研究代表者の研究分野における世界最高峰の国際会議であるSC14にて研究成果の展示を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、学術連携クラウドのユースケースに関する検討を継続するとともに、新たなユースケースを対象とした負荷分散モデルの検討を進める予定である。近年、計算環境の仮想化技術であるLinuxコンテナ技術の進展により、アプリケーションプログラムとその実行環境(OSやライブラリ等)をコンテナとしてまとめて高速に移送することが可能となりつつあり、クラウド基盤間でのアプリケーションの可搬性向上が期待されている。本研究においてもLinuxコンテナを用いるユースケースおよび負荷分散モデルを検討していく予定である。また、これらの検討にあたっては、本研究が対象とする学術連携クラウドは複数の組織が運用するクラウド環境から構成されるため、他組織のクラウド環境の構築・運用に携わる研究者との意見交換を積極的に行う。
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