研究課題/領域番号 |
24240007
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宮永 喜一 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (20166185)
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研究分担者 |
吉澤 真吾 北見工業大学, 工学部, 准教授 (20447080)
伊藤 良生 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70263481)
黒崎 正行 九州工業大学, 情報工学研究院, 准教授 (80404094)
笹岡 直人 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80432607)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 無線通信システム / 高速無線ネットワーク / コグニティブ無線 / 低消費電力LSIシステム / MIMO-OFDM / Winner II モデル / 高品位映像ストリーミング / 高速MAC設計 |
研究概要 |
現在,高速な無線通信はMIMO-OFDM により1Gbps を超える速度が実現されている。しかし,実際に通信できる環境は限定的であり,様々な環境下における高速無線通信を実現するのは難しい。本研究では,利用環境において,最高のスループットを満足するシステム構成を最適に自動判定し,システムを変更する新技術(多様な通信環境下の高速通信)を開発し,同時にシステムの消費電力が最小になるシステム構成を見出し,システム全体を自律的に変更するアーキテクチャ(コグニティブ低消費電力アーキテクチャ)を新たに提案し,その無線通信LSI を実現する。また提案システムを用いた高品位映像データストリーミング等の応用システムも開発する。 平成24年度における研究実績は次の通り。①新しい通信チャンネルに対するコグニティブシステム向き環境センサーの設計(鳥大担当)。通信環境をできるだけ高精度に推定するため,無線通信環境(アジマススプレッド,K ファクタ,ドップラー周波数,CNR,占有帯域,ドップラー周波数)の推定アルゴリズムを提案した。②多様な通信環境下でも超高速通信を実現するMIMO-OFDM システムの方式設計(北大担当)。インドア・アウトドアの環境を含めて,大きく5つの通信環境グループに分け,それらの環境を高精度に同定する方式を開発した。③最適低消費電力化技術の開発(北大担当)。上記②の手法による最高スループットを保証し,その条件下における消費電力最小化を実現する無線システムの自律システムを提案した。これにより,最高速度と最小消費電力を同時に達成する新方式を設計・開発した。④コグニティブシステムの最適制御とMAC インターフェイスの設計(九工大担当)。「多様な通信環境下での高速通信」及び「最適低消費電力通信」を同時に実現する新制御機能の方式提案を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度では,必要な新方式の設計・提案,さらにその実現・シミュレーション評価を行った。具体的な設計開発内容については,予定以上のレベルに達しており,本研究課題の申請内容に関する達成度は,100%を超えている。各項目については,以下の通り。 ①コグニティブ方式のための環境センサー設計(鳥取大学担当)。②の成果より,通信環境パラメータの推定範囲を当初の精度より低く設定し,より安定な推定が得られる方式に改良した。精度を緩和したのは,無線通信チャンネルを大きく5つに分割できたためであり,本研究の目的を達成する,十分な精度を実現できた。②多様な通信環境下での高速通信システムの方式設計(北大担当)。より現実的な通信チャネルに近いとされるWinner II モデルに基づく無線通信環境モデルの提案と評価を行った。さらに多様な無線通信環境に適応できるMIMO コーダー・デコーダーの方式設計を行った。③最適低消費電力化技術の開発(北大担当)。低消費電力化を行うために,動的アーキテクチャを導入した。従来の並列・パイプライン処理では,ゲート総数が多くなり,そのためのリーク電流が無視できず,結果として消費電力低減が不可能となっていた。提案するアーキテクチャは,ゲート総数をできるだけ少なくし,同時に最大の並列化を実現するため,リーク電流を増加させずに,全体の消費電力を下げられる。デコーダーのアルゴリズム自信を簡略化・高速化することで,消費電力の削減を行った。④コグニティブシステムの最適制御の設計(九工大担当)。多くのコグニティブシステムが近接エリアに点在する時,どの通信バンドを動的に利用するかなどのネゴシエーションやどのタイミングで通信を行うかの制御は容易ではない。これらの制御を,自律した制御モジュールにより実現する新プロトコルを設計提案し,高度な通信品質の確保(QoS)を実現した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の申請時の予定の通り,2 年目以降では,初年度で設計・提案された種々の通信方式に対するシミュレーション評価と,具体的なLSI システム(FPGA)の設計実現を行う。項目毎の研究計画は以下の通り。①コグニティブ方式のための環境センサー設計(鳥取大)。無線通信環境推定アルゴリズムのシミュレーション評価と再設計による性能の最適化を行う。②多様な通信環境下での高速通信システムの方式設計(北大)。提案するマルチチャンネル無線通信環境モデルの精度評価と改良を行う。最高スループットを保証した最小消費電力無線通信の自動設計方式に関する性能評価。③最適低消費電力化技術の開発(北大)。MIMO アルゴリズム自体の改良により,並列・パイプライン処理化を実現し,動的アーキテクチャにより実装することで,極低消費電力化を達成し,その性能評価を行う。上記のすべてのモジュールを統合し,トータルシステムを設計・開発し,そのLSI 化を行う。それにより,正確な消費電力低減効果を評価できる。④システムの最適制御とデータリンク層とのインターフェイス実現(九工大)。高品位映像データストリーミングを可能とするQoS 型MAC/LLC の設計・開発と実装を行う。これにより,カメラなどで取り込んだ映像を,実時間で無線伝送するデモシステムの開発が可能となる。これらの設計は,基本プロトコルが標準化されており,それに追従する形式で実現する。⑤コグニティブMIMO-OFDM システムのLSI 実現(北大)。上記の各項目①-④を統合したトータルシステムを設計し,そのシミュレーション評価を行う。本システムは,コグニティブ制御モジュール,動的MIMO-OFDM 無線通信モジュール,環境センサリングモジュールが,基本ベースバンド(BB)回路となる。
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