研究実績の概要 |
本年度は、回線容量設計に多様性の概念を導入し、トポロジー構造と回線容量が多様となるように設計しておくことで、より大規模な環境変動(トラヒック変動や故障)に対応することを数値評価により示した。 回線容量が多様ではないケースとして、ネットワークの工学的最適化を図り、ノードの役割(=集線等)に応じた回線容量を用意する場合が考えられる。これは、ノードと回線が事前設計により与えられた役割を果たしているという点では効率的であるが、設計外の事象に対する堅牢性が損なわれている。ここでの堅牢性は未知の環境変化への適応性を指しており、単一ノード故障などの事前設計で考慮する範疇のものではない。例えば多重故障に対してトラヒックが収容できない場合である。 そこで、回線容量の多様性を示す指標としての相互情報量指標を新たに導入した。導入した相互情報量指標は、ここではリンクe の迂回路がリンクe の故障に備えて用意する容量の倍率を準備倍率W_eとし、準備倍率を確率変数X, 故障前にリンクを流れるトラヒック量を確率変数Yとし、確率変数Xと確率変数Yの相互情報量I(X,Y)を導入している。 様々なI(X,Y)を有するトポロジーを生成し比較評価を行った。その結果、故障リンク数が多いとき、エントロピーが大きなネットワークで利用可能帯域(AVB) の最悪値が良いことが明らかとなった。これらの結果から、事前に発生頻度や発生規模を想定して設備設計を行うネットワーク設計手法は、設計時に想定した環境下もしくは想定の範囲内の環境ではよい性能が得られるものの、環境が大きく変化すると急激に性能が悪化している。本研究において導入した相互情報量指標を大きくするよう設計することで、環境変化に対する適応性や拡張性を高まることが示された。
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