研究課題/領域番号 |
24240023
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西田 豊明 京都大学, 情報学研究科, 教授 (70135531)
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研究分担者 |
大本 義正 京都大学, 情報学研究科, 助教 (90511775)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 会話エージェント / 会話基盤 / 意思疎通 / 状況理解 / 共同意図管理 / インタラクション分析 |
研究概要 |
会話に関わる視聴覚場を丸ごと仮想化し,物理環境と対応付ける.会話エージェント・人間の円滑で確実な共同意図設定と実行管理のための頑健なコミュニケーション基盤を構築し,人間のパートナーとして共同作業をする能力を備えた{仮想/物理}会話エージェントのプロトタイプを並行して研究開発する.「場の共有」「頑健な会話基盤」「状況理解・評価」「タスク共有」「共同意図管理」「インタラクション分析」の6つのテーマを設定し,インタラクションダイナミクスの分析,頑健な会話基盤の実装,状況の共有,状況理解・評価の共有,意図の共有と共同発展について研究を行う.評価用タスクを設定し,質問紙,潜在連合テスト,ビデオ分析,生理指標・脳波分析を総合して会話エージェントの意思疎通力の評価指標を構成する. 仮想空間における複数の対象とのコミュニケーション,実環境における人間のコミュニケーション,人間とエージェントとの対面コミュニケーションについて焦点を当て,「頑健な会話基盤」「状況理解・評価」「タスク共有」の3つのテーマについては探索的検討を主とし,「場の共有」「共同意図管理」「インタラクション分析」の3つのテーマについては発展的研究を主とした取り組みを行った. 探索的検討を行った3つの課題について研究を進めた結果,タスク遂行のためのオントロジーを構築するだけではコミュニケーションを成立させることが難しいことが明らかになり,ドメインオントロジーやタスクオントロジー以前にコミュニケーション対象として認知・承認されるようなプロセスが必要であることが示唆された.この点を踏まえ,問題を,コミュニケーション生成部分とタスク遂行部分の2つに分割し,それぞれ探索的検討を行った.発展的研究を行った3つの課題については,順調に発展させ,一部の課題では次年度に予定していたテーマも包含するものとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コミュニケーション対象として認知・承認されるようなプロセスにも着目すべきであるという新たな知見が得られた.これに基づいて,双方向的なコミュニケーションを必要とする具体的なナビゲーションタスクとして,仮想空間内でのフットサルゲームおよびバスケットボールゲームの簡易版を開発した.さらに,そこでエージェントが持つべきドメインオントロジー・タスクオントロジーを人間が作成して,仮想空間内でのHAI実験を実施し,コミュニケーション対象として必要とされる能力の認知構造や,相互適応的な学習プロセスについて,一般化につながる事例を収集することができた.これにより,準教師付言語・非言語コミュニケーション学習,仮想空間内視聴覚シーンのオントロジー指向解釈と評価,仮想空間のドメインオントロジーとナビゲーションに関するタスクオントロジー開発などの研究課題をおおむね遂行することができた. 「場の共有」「共同意図管理」「インタラクション分析」の3つについては,順調に研究を発展させることができた.「場の共有」については,写真とレンジセンサデータから建物内部と外部を3次元復元した上で写真と対応付ける手法を開発し,人間とエージェントがインタラクションする場として十分な空間を構築することができた.「共同意図管理」については,ナビゲーションタスク中の共同意図の能動的形成プロセスを,学習プロセスの事例収集とともに観察・分析するとともに,従来の共同意図推定手法の精緻化を行った.さらに,次年度に予定されていた,共同意図推定手法の複数人への拡張を行った.「インタラクション分析」においては,次年度に予定されていた,状況理解・評価に関して得られた知見を利用して視聴覚シーンにおいて生じるイベントに自動アノテーションする手法の開発,それを利用した分析支援について,前倒しである程度実現できた.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の仮想空間内でのインタラクションを中心とした検討で得られた知見を実空間インタラクションで活用するとともに,多くの実インタラクションで問題となる,持続的学習についての研究を,仮想空間と実空間の両面で進める.持続的学習機構の開発においては,タスクオントロジーおよびドメインオントロジーの持続的構築,仮想化空間におけるオブジェクトとイベントの対応関係の追加的構築,会話エージェントの状況理解・評価の段階的構築,が研究の課題となる.これらの中には,平成24年度においてタスクとしては実施されなかった,インタラクション行動の模倣が含まれる.また,共同意図の能動的構築の中心的部分を,昨年度の知見を踏まえて自動化する.これらに必要とされるコミュニケーションデータの機械的な分節化を行うために,従来の変化点推定のアルゴリズムRSSTを発展させる.
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