研究課題/領域番号 |
24240034
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
末廣 尚士 電気通信大学, 大学院情報システム学研究科, 教授 (10357254)
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研究分担者 |
池内 克史 東京大学, 情報学環, 教授 (30282601)
音田 弘 独立行政法人産業技術総合研究所, 知能システム研究部門, 主任研究員 (40356746)
冨沢 哲雄 電気通信大学, 大学院情報システム学研究科, 助教 (60549707)
工藤 俊亮 電気通信大学, 大学院情報システム学研究科, 准教授 (90582338)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 柔軟物操作 / 紐結び / 作業モデル / 作業スキル / 双腕ロボット / 多指ハンド / 人間観察 |
研究概要 |
「紐結び作業のためのセンサ-モータ系のモデル化」として,結び目の位置,紐の形状の一部をなすセグメントの長さなどの計量を増減する動作を表現するための,紐および結び作業のモデル化を行った.紐のセグメントを形成する箇所をあらかじめ支持する準備動作,それに対して結びの手順を実行する結び動作,最終的な長さを調整するための調整動作などの基本動作を導出した.紐の形状モデル・物理モデルの拡張と,結び目を作る際の把握位置、把握位置の変位,引っ張りの方向,張力を用いたモデルを構築した. 「 紐結び作業スキルの実装および作業構成」として,紐結び作業の分析を行い,抽出した紐結び基本動作が実行できる双腕多指ハンドの設計,試作を行った.多指ハンドの作成に際してサーボモータ用のRTコンポーネントを新規に開発し,双腕ロボットを含め全体をOpenRTM-aist で統合した.また紐操作に必要な視覚特徴について検討を行い,紐とハンドとの関係の表現および検出や端点検出の手法を開発した. 「人間の観察に基づく作業モデル抽出」として,紐状物体の概念を拡大し,剛体や手指までも紐であると見なし,紐と紐の絡まり度合を位相幾何学により数値化することで,相対的な位置関係を記述できることを提案した.ペン回し動作の作業モデル化とロボットによる再現を行うことで,その実用性を示した.また,実生活において紐状物体は数多く存在するが,必ずしもきれいな紐の形をしていないものも多い.そのような対象の例として植物のぶどうを収穫するという作業を設定し,作業のモデル化を試みた.葉や果樹による視覚的な隠れにより紐形状の綺麗な全体象が得られない場合,人間の場合は容易に状況把握が出来るにもかかわらず,ロボットにおいては状況の推測はとても難しい課題であることを発見した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
紐の形状モデル・物理モデルの拡張として,結び目を作る際の把握位置、把握位置の変位,引っ張りの方向,張力を用いたモデルを構築した.それを考慮した基本動作を抽出し,結び目位置や結び形状がどのように変化するかを調べ,逆演算を実行することで,紐結び作業の計量を考慮したセンサモータ系のモデル構築が可能であるとの見通しを得ている. 多指ハンドと双腕ロボット全体をOpenRTM-aist で統合することで,多自由度の協調や柔軟なセンサ-モータ系を容易に実装できるようなシステムが構築できた.また紐操作に必要な視覚特徴についても順調に進捗している. 位相幾何学を用いた手と物体の作業モデル化は、ペンのような単純な形状では有効に働くことを確認した。理論の構築と、ロボット実機による実証がつながったため、基礎理論の構築は出来たと考えている。ぶどう狩りのような複雑な環境下における紐状物体の作業モデル化については、課題の検討がまだ不十分であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
計量を考慮した結びに必要十分な情報これらの情報の取得法,それを用いた作業モデルの構築を進めていく.具体的に止め結びについて,把握位置,その変位,引張りの方向を用いた作業モデルを作成し,本アプローチの有効性を確認して行く. 双腕多指システムを用いて紐結びに必要と考えられる基本的な紐の操り動作パターンを具体的に実装する.紐の操り動作を実行する際に必要となるパラメタについて,最終的な結び目形状とかかわりが深いと考えられるパラメタを抽出し,そのパラメタと実際の結び目形状との関係を調べる.これによりプログラムで形状を制御できる紐結び手法を確立していく. 位相幾何学を用いた手と物体の作業モデル化については,提案の理論がロボットのマニピュレーションにおいて広範に使えることを示すために,対象物体が複雑な形状を持っている場合の操作についても検証する.ぶどうのような複雑な状況における紐状物体の操作においては,人間が複雑な状況は把握するためには必ずしも視覚に頼らず,実際に手を伸ばして触れてみて,手繰るような操作を行うことで状況の把握をしているのではないか,という仮説を立て,視覚と触覚の相互フィードバック系を用いた認識システムを構築することを計画している.
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