研究課題/領域番号 |
24240037
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
三池 秀敏 山口大学, その他部局等, 名誉教授 (10107732)
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研究分担者 |
長 篤志 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (90294652)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 感性認知科学 / 錯視 / 反応拡散モデル / 非線形物理 / ノイズ / 確率共鳴 / 脳機能 |
研究概要 |
本研究の研究期間内での解明を目指している4つの課題のうち、平成24年度は第一課題(反応拡散系の自己組織的画像処理メカニズムの解明と錯視現象の数理モデルの提案)に関して一定の成果を得た。特に2次元・3次元の空間離散(時間連続)反応拡散モデルにより、エッジ強調や2値化の自己組織的機能を示すパラメータ領域を示す相図の提案や、拡張した階層化モデルを用いて高精度のステレオ画像処理アルゴリズムの構築をおこなった。 平成25年度は、第二の課題である空間離散反応拡散モデルのパターンダイナミックスの理解と錯視現象との相関の解明を中心に進めた。特に、動的な視覚心理現象として知られている「モーション・シャープニング(運動鮮鋭化)」を再現できる画像処理プログラムの開発を基礎として、現象を再現する反応拡散モデルの提案を行った。画像処理プログラムの提案では、従来の過去と未来に対して対象的な時間フィルタを改良し、時間の矢の概念を活かして現時点から過去のデータのみを用いた時間フィルタを設計して新たな運動鮮鋭化フィルタを実現した(国際会議発表、論文投稿準備中)。一方、モーションシャープニングに特有の光刺激に対する線形応答関数(周波数特性)が、刺激強度によりローパス特性からバンドパス特性に変化することを説明できるモデルは従来提案されていない。この視覚機能の非線形特性を再現できるモデルを追及している。最近、神経軸索を伝搬するパルスをモデル化した反応拡散モデル(FitzHugh-Nagumo)にシステムに内在する特性の揺らぎを勘案したマルチプリカティブ・ノイズを考慮することで、基本的な特性を再現できた(研究会発表、論文投稿準備中)。以上により、4つの課題のうち3つの課題のクリアの目途が立ったといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に従ってほぼ順調に推移している。4つの目標とする課題のうち、3つの課題がほぼクリアでき、動的錯視現象の代表ともいえるモーションシャープニングを説明する物理モデルの提案と、これを人工的に再現する画像処理プログラムの開発が出来、後者に関しては企業との共同で二つの特許の出願を予定している。 一方、25年度8月(29日、30日)には第二回日独ワークショップ(非線形科学と感性情報処理)を山口市(セントコア山口)で開催し、国内の関連研究者を含めた研究交流を行い、この中で十分な情報収集と成果の報告を行うことが出来た。また、26年1月(9日、10日)には脳のダイナミックス研究会を開催し(山口大学工学部、宇部市)、視覚生理現象・心理現象の研究者(理化学研究所、九州大学、山口大学)及び非線形物理の研究者(九州大学)を一堂に会した情報交換を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、前年度まで2年間の体制を見直し、連携研究者の追加と学術研究員の新採用により、研究チームの強化を図った。26年度の体制は研究代表者と研究分担者以外に、2名の学術研究員と1名の技術補佐員(科研費で雇用)の他、連携研究者(学内1名、学外2名)の計8名の体制となった。これに大学院生を研究補助者に加えて、動的錯視を用いた視覚心理実験を学生を対象として実施する予定である。すなわち、基礎的な現象の理解から、これを利用した応用研究のフェーズに入る。 一方、新たな学術研究員は九州大学のポスドクの経験が有り、九州大学工学部応用物理学教室(日高助教)との共同研究もスタートさせた。8月末には、今度はドイツでの第三回日独ワークショップ(非線形科学と感性情報学)を予定している。また、6月末には広島大学理学部(中田教授)との連携で西日本地区のミニ研究会を立ち上げ、関連研究の活性化を図る。
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