研究課題/領域番号 |
24240037
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
三池 秀敏 山口大学, その他部局等, 名誉教授 (10107732)
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研究分担者 |
長 篤志 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (90294652)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 感性認知科学 / 錯視 / 反応拡散モデル / 非線形物理 / ノイズ / 確率共鳴 / 脳機能 |
研究実績の概要 |
本研究課題の研究期間内での解明・探究を目指しているのは、以下の4つ課題である。1)視覚機能の創発性を実現する非線形数理モデル(離散的反応拡散系)の改良と、その特徴的なパターンダイナミックスの解明(24・25年度)。 2)視覚の錯視現象に注目し、錯視画像に動的なノイズを印加した場合の、人の視覚系の応答特性の理解と、非線形数理モデルによる理解(25・26年度)。 3)錯視量のノイズ依存性を、性・年齢による違いや性格・自我状態等のタイプによる違いで分類し、個人差のデータを蓄積する(25・26年度)。 4)個人差データの蓄積を受け、臨床心理神経学的な応用可能性を模索する。特に、医学部病院医師との連携で、高齢者の認知症や幅広い年齢層でのうつ病の症例において、錯視量の計測を通して臨床医学への応用確立のためデータ蓄積する(27年度)。 平成26年度の課題の一つである、錯視の非線形モデルによる理解は、「動的錯視」を対象に、FitzHugh-Nagumoモデルにより、その特徴的な周波数応答特性の光強度依存性を再現することに成功した。線形近似での解析的なアプローチによる定性的な説明と、数値シミュレーションによる非線形特性の再現による半定量的な説明が可能となった。現在、論文執筆中であり、Phys Rev Letters等への投稿を予定している。第二の課題である、錯視量の個人差データの蓄積を試みているが、錯視量自体の決定方法に曖昧さが残り、よりシンプルな錯視であるマッハバンド錯視を対象にデータを蓄積した。結果は、6月の日本時間学会で報告予定である。得られた主な知見は、錯視が知覚される時と消失する時とでは、ノイズの効果が全く異なるという現象である。この場合も、動的視覚ノイズの影響の違いを解明すべく視覚心理実験を実施し、更にデータを積み重ねている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に従ってほぼ順調に推移している。4つの課題のうち3つの課題がクリアされ、特に動的錯視現象の代表である運動先鋭化現象を説明する物理モデルと、これを人口のアルゴリズムで高速に実現する画像処理プログラムが開発でき、内視鏡への応用も視野に入れて企業との共同研究を実施して来た結果が「特許」として認められた。また、第3回日独ワークショップ(Emerging Phenomena in Spatial Patterns)をドイツ・マグデブルグ大学で開催し(2014年9月22日:講演日本側6件、ドイツ側4件)、視覚の非線形特性に関する意見交換を含めて有益な知見を得た。この成果を動的錯視モデルの数値シミュレーションに生かした。この他にも、山口大学時間学研究所に2か月間滞在されたロシア・モスクワ大学のミハエル・トリベルスキー教授を囲んでのセミナーを開催し(2014年11月21日)、運動先鋭化現象の非線形モデルに関する理解を深めた。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに得られている成果を論文として纏め、国際学会論文誌に投稿するとともに、今年度も開催予定の第4回日独ワークショップ(千葉大学)での成果報告を計画している。また、北海道大学・電子科学研究所での非線形数理ワークショップでの意見交換も予定しており(2015年8月)、動的錯視現象の数理モデルの確立を目指す。 一方、第四の課題である、臨床心理神経学的な応用は、山口大学医学部付属病院との連携を進めており、錯視量の計測手法の確立を目途に、9月以降にデータ取得を計画している。臨床医学への応用の可能性を見極めるデータの蓄積を目指して、複数の動的錯視現象の錯視量計測手法を確立する予定である。
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