研究課題/領域番号 |
24240045
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
岡 浩太郎 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (10276412)
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研究分担者 |
鈴木 孝治 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (80154540)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオイメージング / 蛍光プローブ / 細胞内Mgイオン動態 / パーキンソン病 / ミトコンドリア |
研究概要 |
細胞内Mgイオンの生理的な振る舞いは最近になって大変注目されているものの、その詳細は従来明らかでなかった。その一因には細胞内Mgイオンの動態を調べるための適切な方法がなかったことがあげられる。本研究では細胞内Mgイオン動態を明らかにするための新規プローブ等の作製と、それを用いた神経細胞内Mgイオンの生理的な役割について明らかにすることを目的としている。本年度は以下のような結果を得ることができた。 ①細胞局所のMgイオン濃度を計測するための新規プローブの開発に成功した。このプローブは、我々が開発したMgプローブKMG104をテトラシステインタグに結合するように改変したものである。これにより事前細胞にテトラシステインタグを発現させたタンパク質を導入することにより、例えばアクチンフィラメント近傍のMgイオン濃度変化を観察することができる。この新規プローブを用いることにより、ミトコンドリア内膜近傍での急峻なMgイオン放出を可視化することに成功した。 ②PC12細胞を用いたパーキンソンモデル系において、細胞内Mgイオンダイナミクスと細胞死との関係を明らかにした。PC12細胞にMPP+を添加するとパーキンソン様の細胞死を引き起こすことが可能である。その際に急峻な細胞内Mgイオン濃度の上昇が起きることを明らかにした。この時のMgイオンの多くは、細胞外より細胞内に導入されるものである。またこの細胞死の段階で、細胞膜およびミトコンドリアでのMgイオン関連チャネルやイオン輸送体のmRNA量が劇的に変化していることがわかった。 ③ヒトiPS細胞より分化誘導させたドーパミン神経細胞について、種々の神経伝達物質刺激により細胞内Mgイオン濃度の上昇が引き起こされることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞内Mgイオン動態を可視化するためのプローブ作りに成功した。またPC12細胞を用いたパーキンソン様細胞死について、細胞内Mgイオン動態と細胞死との関係を詳細に明らかにすることに成功し、これについては現在投稿論文をまとめつつある。さらに当初より目的としていたパーキンソンモデル系としてのヒトiPS細胞から分化誘導させた神経細胞のパーキンソン様の細胞死を調べる研究を行う準備として、グルタミン酸刺激に伴う細胞内CaイオンおよびMgイオン動態の同時可視化に成功した。最終年度には、ヒト神経細胞のパーキンソン様細胞死について、PC12細胞での結果と比較して研究を効率的に進めることが可能と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
次のような項目について研究を進める。 ①ヒトiPS細胞より分化誘導させた神経細胞について、細胞内2価陽イオンの動態を既存のCaイメージング法と我々が開発したMgイメージング法を併用して明らかにする。 ②ヒトiPS細胞より分化誘導させた神経細胞について、MPP+添加による細胞死の過程を種々のイメージング手法と分子生物学的手法を併用して調べ、Mgイオン動態と細胞死との関係を明らかにする。 ③蛍光タンパク質を用いた蛍光共鳴エネルギー移動型Mgイオンプローブを開発する。
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