研究課題/領域番号 |
24240048
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
崎村 建司 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40162325)
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研究分担者 |
阿部 学 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (10334674)
夏目 里恵 新潟大学, 脳研究所, 技術職員 (60467082)
周 麗 新潟大学, 脳研究所, 研究員 (80568410)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 遺伝子改変動物 / ラット / ES細胞 / 異種間キメラ |
研究概要 |
本研究の目的は、脳機能解析及び病態解明に利用できる遺伝子改変ラットを安価かつ容易に作製する方法を確立し、ノックアウトマウスと同様な感覚でノックアウトラットを研究リソースとして利用できる基盤を作ることである。そのために、ラットES細胞の培養条件、相同組換えを用いた迅速な遺伝子改変方法、確実に生殖細胞への分化をするキメラ作製法を確立する。さらに、マウス・ラット異種間キメラを用いたラットES細胞由来生殖細胞(精子及び卵子)の作出法を開発することを計画して研究を進めてきた。 今年度は、すでに樹立しているSDラット及びBNラットES細胞から生殖系列遺伝するキメラ作製方法を確立するための基礎的な条件設定を進めてきた。NSE-VenusノックインラットES細胞株及びトランスジェニックラットES細胞株をラット胚に導入し、キメララットを作出した。これらの動物には、ES細胞由来のトランスジーンを発現する動物は得られたが、生殖系列遺伝はできなかった。引き続きES細胞を注入したキメララットから生殖細胞へES細胞が分化する個体を検索する。 一方、ラット・マウス異種間キメラを用いてラットES細胞由来生殖細胞を得るプロジェクトに関しては、精巣及び卵巣形成不全のあるため不妊であるTifp39遺伝子ノックアウトマウスの作製を進め、その樹立に成功した。また、雌の生殖細胞形成能は正常であるが、雄の精子形成のみができないDmrt7遺伝子ノックアウトマウスを東北大学西森克彦教授から分与を受け、ホモ雌の量産をおこなっている。今後ヘテロ雄精子と人口受精をおこない大量のノックアウト胚が得られるように準備ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに樹立しているSDラット及びBNラットES細胞から生殖系列遺伝するキメラ作製方法を確立するための基礎的な条件設定を進めてきたが、未だ生殖系列に入るキメラを樹立できない状態である。当初より、この段階が最も困難であることは予想していたが、条件検討の実験が十分にできなかったことが最大の原因と考えている。これは、当該研究を遂行する動物施設が耐震改修により4ヶ月程度使用できないことによる。このために、ラット購入費などの予算執行にも支障を来し、一部資金執行を次年度に繰り延べた。 一方、異種間キメラによるラット生殖細胞の作出をはかるべく、生殖細胞形成不全のTifp39遺伝子ノックアウトマウスは予定通り樹立でき、胚の大量生産をおこなう準備を進めているところである。また、Dmrt7遺伝子ノックアウトマウスも分与を受けて、胚の生産に向けた準備が進んでいる。 ラットES細胞における相同組換えによる遺伝子改変をおこなうために、その培養条件や、薬剤選択の詳細な条件検討を進めてきた。ほぼ安定に細胞を扱うことができるようになったが、解析途中の大量のクローン細胞株を凍結する方法については現在検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
ラット・ラットキメラによる遺伝子改変動物の獲得に必要な基本的な条件を決定する。これまで報告されているES細胞を用いた遺伝子改変動物は、有色であるDA系統のラットES細胞をSD系統のラット胚に導入して樹立したものがほとんどである。我々はSD、BN、Wistar、DA系統それぞれからES細胞を樹立しているが、受容胚としてはどの様な系統の組み合わせが良いのかを検討する必要がある。また、受容胚の取得に関しては、ラット系統によりホルモンの応答性が異なるなど、強制排卵による手法が確立しておらず、安定的に胚を得ることが困難である。ラットの週齢やホルモン量など諸条件を検討して安定的に受容胚を取得できる方法を確立する。 ラット・マウスキメラに関しては、生殖細胞形成能がないTifp39遺伝子ノックアウト及び精子形成能がないDmrt7遺伝子ノックアウトマウスから胚採取用の雌マウスを多量に生産し、人工授精によりノックアウト胚を取得する。これら胚にNSE-VenusノックインラットES細胞株及び蛍光蛋白遺伝子トランスジェニックラットES細胞株をを導入し、ラット由来生殖細胞を持つキメラマウスの作製を試みる。 ラットES細胞での遺伝子改変を効率的に進める諸条件を検討する。とりわけ、遺伝子組換え体のスクリーニングをおこなう時に多数のクローンの凍結が必要であるが、その有効な方法が確立していない。ラットES細胞は分化しやすく、マウスES細胞でこれまで採用されてきた凍結手法ではうまくいかないことが明らかになっている。この問題を解消するために、道具を含めて新たな方法の開発をおこなう。
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