研究課題/領域番号 |
24240051
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
中島 欽一 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (80302892)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2016-03-31
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キーワード | レット症候群 / MeCP2 / miRNA / ニューロン |
研究概要 |
現代社会において神経発達障害を中心とした精神疾患の患者数は膨大な数にのぼり、病態解明および治療法の開発が急務となっている。しかし、これらの精神疾患の発症メカニズムはいまだに解明されていない。MeCP2遺伝子の変異はRett症候群(RTT)だけでなく、アンジェルマン様症候群や自閉症などを含めた種々のヒト神経発達障害に関与することが報告されている。また、MeCP2はメチル化DNA結合性転写抑制因子として同定されたが、それ以外の機能がRTT発症と重要な関わりがあるのではないかという報告がなされつつある。そこで本研究では、このMeCP2の新規作用機序を明らかにすることを目的とした。 我々はまず、RTT発症に重要なMeCP2の新規機能同定を目的として、神経系主要細胞種におけるMeCP2相互作用因子の網羅的プロテオミックスクリーニングを行なった。その結果、神経系細胞種における共通のMeCP2相互作用因子として、microRNA(miRNA)の生合成に必須なDrosha複合体の構成因子であるDDX5(p68)、DDX17(p72)などのRNA結合タンパク質を同定した。加えてMeCP2がこれらのタンパク質と実際に複合体を形成し、特定標的miRNAのprimary-からprecursor-formへのプロセシングを制御することを明らかにした。また、この特定標的miRNAがRTT病態に重要かどうかを調べるため、MeCP2欠損ニューロンに発現させ、その表現型が改善されるかどうかを評価した。興味深いことに、我々が同定した標的miRNAを発現させたMeCP2欠損マウス由来ニューロンでは、RTT神経病態の特徴的表現型である細胞体サイズの減少および興奮性シナプス伝達の異常が改善された。 以上よりMeCP2が特定のmiRNAのプロセシングを調節することで、神経機能を制御していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画していた、miR99a以外の新たなMeCP2標的miRNAの同定には至っていないが、miRNA199aの発現により、MeCP2欠損マウス由来ニューロンの細胞体サイズの減少や興奮性シナプスで伝達の異常の改善が見られ、このmiRNAのニューロンにおける機能の一端を明らかにすることが出来た。また、神経幹細胞におけるmiR199aの機能解析も行っており、このmiRNAが神経幹細胞からアストロサイトへの分化を抑制しつつニューロンへの分化を促進する作用を持つことも明らかに出来たことから、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
4月から所属機関を九州大学大学院医学研究院へと異動したため、研究の進展に遅れが出ることは避けられない。しかし、種々の手続き等を早期に行い、出来るだけ滞りのないように努めたい。また、トランスジェニックマウスの作製は経験も豊富な外部機関に依頼し、研究展開の迅速化を図る。
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