研究課題/領域番号 |
24240053
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
宮脇 敦史 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (80251445)
|
研究分担者 |
濱 裕 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 専門職研究員 (30261796)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 組織透明化 / 3次元構築 / 神経回路 / 免疫組織学 |
研究概要 |
<1.Scale技術の普及>2011年発表の「ScaleA2試薬による固定組織透明化技術」をもとに、国内外の研究室と共同研究を進めている。大容量の画像データの解析についても技術交換を行ってきた。 <2.Scale技術の改良・改善>ScaleA2試薬においては、組織が膨張する、および、処理時間が長い、という問題点が指摘されてきた。これらを解決するべくScaleA2試薬をもとにScaleS溶液シリーズを開発した。マウス成獣の全脳を、膨張することなく数日以内に透明化することが可能になった。昨年から、ほかの研究グループから、いくつかの固定脳組織透明化技術が発表されており、そうした技術とScaleS技術とを比較検討することを行ってきた。 <3.Scale技術の他の動物種の脳への適用>マウス脳以外に、魚脳、マーモセット脳、ヒト死後脳を使った応用例を作成している。 <4.Scale技術の他の臓器への適用>脳以外に、骨格筋、心臓、リンパ組織などの透明化に成功している。 <5.3次元免疫組織染色化学の開発>固定脳組織における生体高分子の拡散を著しく促進する処理技術を開発し、機械的な切片を作製することなく、3次元的な構造を抗体で染め出すことを可能にしつつある。抗体や標識色素に依存するところが大きいが、厚さ1-2ミリ程度の脳スライスであれば、免疫組織化学染色と3次元再構築を完成することができる。同様に、固定脳組織における化学物質の拡散を著しく促進する処理技術を開発し、3次元的な構造を蛍光色素で染め出すことを可能にしつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Scale技術および他の追随する透明化技術によって、我々が2011年度の論文発表で強調したコンセプト「2Dから3Dへ」の共有認識が拡がりつつある。固定脳透明化技術に内在する問題点も明らかになり、当該技術を開発しながら新しい課題を見出だすことができている。脳組織の処理技術に始まり、蛍光色素、光学顕微鏡、電子顕微鏡、データ解析などに拡がる学際的技術開発研究が進行中である。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、Scale技術の改善・改良を図るとともに、3次元免疫組織染色や3次元組織化学染色との組み合わせを実践的に開発する。Proof of conceptの証明は、透明化が比較的難しいとされる老齢動物脳を使って行う。特にアルツハイマー病研究を意識し、アルツハイマー病患者の死後脳(他研究室との共同研究)やアルツハイマー病モデルマウスの脳を用いた実験を精力的に進める。透明化技術は非常に誤解されやすい状況にあるといえる。論文に掲載されたプロトコールをもとに、各研究者が生体サンプルの状態によっていろいろなファクターをオプティマイズする必要がある。そのあたりのガイドラインを提供していくことが重要であると考えている。
|