研究課題
今年度は、脳の微小領域mcの並列整序されたアレイ(mcアレイ)を解析するために最も重要な段階である「微量並列高感度解析」の準備を中心に進めた。これは、いわゆる井戸型マイクロアレイMMVを用いてタンパク質やゲノムDNAの解析を行うことにある。このために、1)mcなどの分画細胞操作を想定したMMVの開発基礎研究を行ない、成果を得た。2)脳神経細胞の分子環境モニターとして、各種の(指標)タンパク質発現を高感度に検出する予定であるが、そのための指標タンパク質候補を複数検討し、実際にそれらに対する親和性ペプチドのin-vitro selectionを行い、検出系の実現を目指した。 3)細胞内分子環境の解析法として、この他にゲノムDNAのメチル化検出についても検討を行い、制限酵素PstI とランダムPCRを組み合わせた方式が有効であることを確認した。さらに、4)脳微小領域における細胞内Ca2+濃度を高精度でモニター出来るようにするため、これまでに開発した蛍光Ca2+プローブG-CaMPを改良してさらに反応性の高いプローブを開発し、細胞に発現させて性能を評価した。また、5)線虫、ゼブラフィッシュ、ラット(マウスの代用)などの飼育と学習を検討して、記憶研究の材料としての適性をある程度確認することができた。これらの成果として、関係論文12編、学会発表41件、著書 3篇(但し同一単行本中の別章)、特許出願2件などをえることができた。
2: おおむね順調に進展している
本研究での前半の最大の技術的難題は微量・高感度に多種の試料を並列解析する系の確立とモニターするターゲット分子系の具体的取得にあった。その意味で、脳のmc領域解析可能な系とするにはMMVの立ち上げから開始する必要があったが、今年度、 ① 多段階反応テストとしてC2D(Cell-to-DNA)の模擬系として‘NNMA(NGS-non-dependent Microbiome Analysis)’を実践・成功した。② D2P(DNA-to-Peptide/Protein)の模擬系として‘POMM(Panning-on-Microarray-MMV)’を実践して、MMV中で出発DNAから最終的にペプチドを合成し、スクリーニングするまでの操作法開発に概ね成功した。 ③ MMVをペプチドアレイとして使用可能にするための開発として、‘MMV-pepELISA’の開発を行い、ペプチドを担持可能になった。これらの指標タンパク質として、脳科学に関係の深いCREB1aや細胞内信号伝達の要タンパクp38αを追加して高親和性ペプチドの淘汰を目指し準備を進めた。また、実験材料動物に関しても、④MMVに遠心により線虫を導入し、さらに薬剤を投与し、線虫に対する薬剤の効果をイメージングにより確認した。⑤ゼブラフィッシュ個体において、睡眠・覚醒を制御する脳内神経ネットワークの発生を明らかにするため、覚醒状態を維持するhypocretinの遺伝子プロモーターを利用して視床下部内hypocretinニューロンの蛍光標識と発生追跡を行った。⑥学習個体と未学習個体の脳の特定領域における物質的な変化を比較検討するため、ラットを用いて、学習させた行動様式に対する脳の特定領域の破壊が与える影響について、実験条件等を含む基礎的な解析を行った、などの基礎実験を行い、次年度に進む準備をした。
今後は、まず、MMVを用いて、細胞塊に含まれる微量なタンパク質を並列に検出可能であることを示し、具体的に脳研究用のMMV-pepELISAの構築を行なう(実験①)。これを実験試料動物の学習解析に適用していく。そのために、実験対象動物試料の「学習」を実践し(実験③~⑤:線虫、ゼブラフィッシュ、ラット(またはマウス)に関して)、まず、学習・未学習の分子・細胞学的差異の検出に努める(実験⑤)。この⑤の実験は、全て同時にではなく、可能な対象から進めていく。本年はこれらを目標として進める。さらに、最終年度の来年では、目標とする記憶解明のための基盤的方法論としての確立に努める。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 12件) 学会発表 (41件) (うち招待講演 2件) 図書 (3件) 産業財産権 (2件)
PLOS ONE
巻: 9 ページ: e95941
doi:10.1371/journal.pone.0095941
Neuroscience Letters
巻: 24(559) ページ: 111-116
doi:10.1016/j.neulet.2013.11.052.
Avian Biology Research (Special Issue on General and Comparative Endocrinology)
巻: 7 ページ: 10-17
doi:http://www.ingentaconnect.com/content/stl/abr/2014/00000007/00000001;jsessionid=12ba9l78h7rg3.victoria
Mathematical Biosciences
巻: 247 ページ: 59-68
Carcinogenesis
巻: 00 ページ: 1-13
doi:10.1093/carcin/bgt373
Anal. Sci.
巻: 29 ページ: 811-814
Biological Procedures Online
巻: 15 ページ: 7
doi: 10.1186/1480-9222-15-7.
Mechanisms of Development
巻: 130 ページ: 532-552
doi: 10.1016/j.mod.2013.07.004.
Zoological Science
巻: 30(3) ページ: 185-191
doi:10.2108/zsj.30.185.
Genes Cells
巻: 18 ページ: 1070-1081
doi: 10.1111/gtc.12094
Am J Transplantation
巻: 13 ページ: 2154-2160
doi: 10.1111/ajt.12306.
日本薬理学雑誌
巻: 142 ページ: 226-230