研究課題/領域番号 |
24240062
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
千葉 親文 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80272152)
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研究分担者 |
江頭 恒 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (40359964)
渡邉 明彦 山形大学, 理学部, 教授 (30250913)
小畑 秀一 北里大学, 一般教育部, 准教授 (10204273)
竹島 一仁 名古屋大学, アイソトープ総合センター, 准教授 (20126874)
木下 勉 立教大学, 理学部, 教授 (30161532)
有泉 高史 玉川大学, 農学部, 教授 (30286166)
中谷 敬 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (20125040)
外山 史 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60323317)
八畑 謙介 筑波大学, 生命環境系, 講師 (70302370)
丸尾 文昭 筑波大学, 生命環境系, 助教 (30199921)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2016-03-31
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キーワード | 動物 / 生理学 / 発生・分化 / 環境 / ゲノム |
研究概要 |
アカハライモリの資源・技術・情報基盤研究を様々な研究分野に展開するため、以下の3つの項目について研究を行った。 1.トランスジェニック(TG)適用技術の開発/実践適用: 生殖細胞の遺伝子機能を解析する技術として、TG幼生・幼体から摘出した始原生殖細胞を野生型成体の精巣や卵巣に移植する実験について、手技を確立し移植自体が可能であることを明らかにした。移植用mCherryイモリが少ないため現在作製中である。再生芽細胞をその由来組織ごと分けて追跡する技術については、骨格筋や衛星細胞を追跡できるコンストラクトを作製しTG個体を生産中である。また、移植用のGFPイモリを分担者[有泉(玉川大)]に供与した。嗅受容体のスクリーニングについては、嗅上皮とジョビ上皮からcDNA ライブラリーを作製した。なお、今年度予定していた細胞内Ca2+動態や膜電位振動、細胞周期をlive観察するTGシステムについては、遺伝子解析に多くの予算を必要としたため、顕微鏡システムの構築のみにとどめた。 2.遺伝子情報の集積・解析/データベース: 網膜・水晶体再生眼球と胚3ステージ、精巣・卵巣・輸卵管について次世代シーケンスを完了し、アセンブル、Unigene構築、アノテーション付加を進めており、一部についてはすでに研究者がweb上で閲覧できる状態にした。その他の組織についても準備を整えている。 3.イモリの保護・保全/資源化: 研究・教育用イモリの屋外養殖について、継続調査の結果、2011年11月に導入したイモリ975匹のうち、約1割が定着したと推定できた。しかし、東北地方太平洋沖地震(平成23年3月)以来、養殖田に流れ込む湧水の著しい水量の減少と水質の悪化が顕著になってきたことから、流路の変更等の対策が必要となった。地元のいもりの里協議会とともに市民向けイベントや公開講座を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
いくつもの項目を並行して進めたがおおむね順調に進んでいると考えている。しかし、以下の点について若干の遅れがあることは否定できない。 ランスジェニック(TG)適用技術の開発/実践適用については、細胞内Ca2+動態や膜電位振動、細胞周期をlive観察するTGイモリができなかった。また、TG精子やTG卵を作るまでには至らなかった。細胞を追跡するためのコンストラクト(Cre-LoxPを含む)は、一般的な方法では調製が難しく、新規プロトコルの開発を余儀なくされたため、TG動物を得るまで時間がかかってしまった。嗅受容体のスクリーニングでは、そのままではタンパク質が細胞膜上に運ばれないため、最適な細胞株やスクリーニング法の選定に時間がかかり、cDNA ライブラリーの作製にとどまった。 遺伝子情報の集積・解析/データベースについては、まず解析ラインを評価する目的で、網膜・水晶体再生眼球のデータをもとにアセンブリソフトの選択と解析条件の検討、生物学的解析を先行しておこない、その後に、胚3ステージ、精巣・卵巣・輸卵管について完了した。他の組織についても解析手前まで準備したが年度内には間に合わなかった。 イモリの保護・保全/資源化については、少ないながら定着させることに成功したが、世代を回すことはまだできていない。ザリガニなどの捕食動物に幼生が捕食されることが分かったため、この駆除に時間がかかった。また、水量・水質の問題も浮上してきた。
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今後の研究の推進方策 |
トランスジェニック(TG)適用技術の開発/実践適用については、遅れの原因であった技術的な問題はほぼ解決したため、当初の計画通り進める方針である。ただし、細胞内Ca2+動態や膜電位振動、細胞周期をlive観察するシステムの開発については、導入予定であった最新の顕微鏡ライブイメージングシステムが遺伝子解析に予算をかける必要が出てきたためできなかったことから、現有機器を組み合わせながらできる範囲で進める方針である。 遺伝子情報の集積・解析/データベースについては、次年度の上半期中に残りの組織のシーケンスを終了する方針である。それぞれの組織から得られた次世代シーケンスデータをアセンブルし、unigeneファイルとしてまとめ、アノテーションを付ける。他方、シーケンスデータをunigeneにマッピングし、組織ごと予想される転写産物を網羅し、この全情報について解析し、その結果をweb上にフィードバックする。結果がまとまったところから論文として公表する。研究分担者には、想定される遺伝子群がデータに含まれるかどうか、すなわちこのデータが今後の研究に有用かどうかの評価をしていただき、 論文の一部の執筆を担当してもらう。 イモリの保護・保全/資源化については、流路や水田の構造を調整することで水質の問題を回避する予定である。地元協議会と協力し、授精卵や幼生の導入と観察を継続し、世代交代が可能な生育環境を整える。
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